著者の青春の軌跡を辿る短編集と芥川賞受賞作品。 「遠き地平」は、老境を迎えた著者が、ふとした拍子に思い出す若き日の一シーンを、臨場感たっぷりに描いた自伝的連作小説。 樺太で経験した強制労働、思想容疑者として満州に逃避行した話、満州での会社員生活、出征中に妻子が戦災で亡くなったことなど、いずれも味わい深い9篇の短編で構成されている。 また、満州で働いた経験から書かれた「劉広福」は、出征先の中国で芥川賞受賞の知らせを受けた秀作で、周囲から馬鹿にされていた一人の満州人が奇跡を起こす痛快な物語。
目次: 遠い地平 帰郷 北へ往く 時計台 羽根のように 逃亡の時 北満の落日 熱い季節 音楽の鳴るとき 遠い地平 劉廣福
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