言語、文化の狭間で 歴史における翻訳
平田雅博，原聖，割田聖史 編
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| 出版社：三元社 |
| 出版年：2024年03月 |
| コード： 300p ISBN/ISSN 9784883035878 |
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本書は、「翻訳」を歴史的な事象の中でとらえ直していくことを目的とするものである。
歴史学的に「翻訳」を考えるメリットは、歴史的な知見・研究史に照らして、翻訳を取り巻く長期的諸条件をより俯瞰的に見ていくことを可能にする点にあるといえるだろう。
「私の意図はスペイン人歴史家たちに反論することではなく、彼らの手になる記録に注釈や解説を施すことであり、さらには、……スペイン人たちが、外国人であるがゆえに正しく理解できなかったインディオの言葉の通訳の役目を果たすことだからである。……」（インカ・ガルシラーソ『インカ皇統記』、読者への序言中の一節）
目次：
序 章 「翻訳」を歴史の中で考える［割田聖史］
「翻訳」を歴史の中でとらえる
「翻訳」についての基本的態度
「等価」をめぐって
文化史と翻訳
翻訳論的転回における「翻訳」
本書における「翻訳」の理解と本書の構成
註
第1章 大西洋世界と翻訳をめぐるポリフォニー［安村直己］
はじめに
1 スペイン領アメリカ植民地をめぐるポリフォニー
1―1 二つの言語、二つの文化を生きるということ
1―2 ラテン語に翻訳するということ
1―3 一六世紀メキシコ発の手稿の流通
2 メキシコにおけるマリノフスキー
2―1 メキシコとの出会い
2―2 フィールドとテクストの中でのマリノフスキーの不在
2―3 ポストコロニアル状況下のメキシコと帝国
3 インディヘニスモの新たな転回
3―1 インディヘニスモを越えて
3―2 エスニック運動の高まり
3―3 通訳／翻訳の新たな位相
おわりに
註
第2章 フランス革命期翻訳政策再考―ブルターニュ地方の事例を中心に［原聖］
前提
1 革命初期の翻訳政策
2 グレゴワール師の調査
3 革命中期の翻訳政策
4 バレールの政策
5 グレゴワール師の報告
6 「言語の恐怖政治」期とそれ以降
終わりに
参考文献
註
第3章 プロイセン領ポーランドにおける翻訳の諸局面［割田聖史］
はじめに
1 ポーゼン州の成立とポーランド語
2 一八一六年の「翻訳規定」と『ポーゼン大公国諸規定集一八一〇―一八一七』
3 ポーゼン州議会議事録
3―1 ポーランド語のステータスをめぐって
3―2 ニェゴレフスキの招請状問題
4 「文化言語」としてのポーランド語
4―1 ポーランドの公共圏の広がりと翻訳
4―2 ベントコフスキ『ポーゼン大公国の官公庁文書におけるポーランド語問題』
5 翻訳と検閲・監視
5―1 検閲から監視へ
5―2 ポーゼン州におけるポーランド語出版物の監視の始まり
5―3 翻訳によるポーランド語出版物の組織的監視
おわりに
註
第4章 一九世紀におけるウェールズとアイルランドの通訳と翻訳［平田雅博］
はじめに
1 法廷における通訳
1―1 ウェールズの場合
1―2 アイルランドの場合
1―3 ウェールズとアイルランドの比較
2 教育（学校）における通訳、翻訳
2―1 ウェールズの場合
2―1―1 ウェールズ人通訳の助手
2―1―2 助手の微妙な立場
2―1―3 裏切り者
2―2 リンゲンとジョンソンの翻訳論
2―2―1 リンゲンの翻訳不可能論
2―2―2 ジョンソンの翻訳可能論
2―2―3 裏切り者
2―3 アイルランドの場合
2―3―1 生垣学校と国民学校
2―3―2 教室内のアイルランド語使用
2―4 ウェールズとアイルランドの比較
3 宗教（教会）における翻訳
3―1 ウェールズの場合
3―2 アイルランドの場合
3―2―1 一七世紀初頭
3―2―2 一八世紀初頭
3―2―3 一九世紀初頭
3―2―4 一九世紀半ば以降
3―3 ウェールズとアイルランドの比較
おわりに
註
第5章 帝国日本と多言語社会・台湾の狭間の通訳―唐通事の後裔・鉅鹿赫太郎における通訳の場［岡本真希子］
はじめに―問題意識と課題
1 前史―鉅鹿家の系譜
1―1 鉅鹿家の祖・魏之琰―福建から長崎の住宅唐人へ
1―2 第八代：鉅鹿篤義（一八三〇～一八九二年）―幕末・開国から日清・日台関係へ
2 日清国交成立時期の北京官話通訳
2―1 第九代：鉅鹿赫太郎（一八六〇～一九三三年）の出自
2―2 駐日清国公使の通訳
3 帝国日本の官僚組織・陸軍のなかへ
3―1 神戸地方裁判所の裁判所書記
3―2 日清戦争・台湾領有前後の清国語通訳官
4 台湾総督府法院の高等官通訳
4―1 渡台と総督府の嘱託通訳
4―2 法院通訳の創設と高等官通訳
4―3 司法官との対比
4―4 法院通訳の自負
5 法院の通訳言語の変化のなかで
5―1 法院の北京官話通訳と複通訳制度
5―2 法院における台湾語奨励方針
5―3 台湾語通訳の台頭／北京官話通訳の退場
6 退官後と唐通事の後裔をめぐる語り
6―1 大稲埕居住と「内台融和」団体
6―2 赫太郎死去後の台湾における語り
6―3 「長崎学」における語り
おわりに
註
第6章 翻訳し合う社会は―ハプスブルク君主国世紀転換期のスラヴ語話者［佐々木洋子］
はじめに
1 三月前期からターフェ時代までの小学校と中等学校
1―1 三月前期までの学校制度
1―2 三月革命の影響
1―3 アウスグライヒの影響
1―4 ターフェ時代の学校
2 世紀転換期のスロヴェニア語学校とイストリア州の「公用語」
2―1 イストリア州の初等・中等教育の「惨状」
2―2 ギムナジウムとスロヴェニア語・クロアチア語
2―3 「公用語」とスロヴェニア語
おわりに
資料／二次文献
註
第7章 「文化的翻訳」の場としての東プロイセン／マズーレン―「言語」と「民族的マイノリティ」の位相［川手圭一］
はじめに
1 ヴァイマル共和国における言語・文化・民族的マイノリティ
2 第一次世界大戦後の東プロイセン・マズーレン
3 住民投票後のマズーレンにおける言語状況
4 マズーレンにおける日常語としての「マズール／ポーランド語」
5 東プロイセン／マズーレンにおけるポーランド語学校・授業
結びにかえて
註
終 章 「文化の翻訳」をどう考えるべきか［原聖］
はじめに
1 「文化の翻訳」論
2 翻訳論の基礎
2―1 ヤーコブソン
2―2 ベンヤミン
2―3 言語学の基礎概念
3 ポストコロニアル研究
4 言語人類学の翻訳論
5 翻訳学の翻訳論
おわりに
参考文献
註
あとがき［平田雅博］
執筆者紹介
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