関東大震災 史料が証す戒厳令下の大虐殺の真相 朝鮮人・中国人・社会主義者の犠牲
久保井規夫
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出版社:柘植書房新社 |
出版年:2024年09月 |
コード: 288p ISBN/ISSN 9784806807735 |
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先達の努力によって、政府関係機関が所蔵し、保管が義務付けられている文献史料には、朝鮮人虐殺の真相を示し、国家責任を明示する内容のものも数多くあることが発見された。政府は、責任逃れのために、それらの文献史料を非開示扱いにして隠蔽している。そのような政府の姑息な誤魔化しを許さないために、虐殺の真相と官憲の責任を明示した公史料・文献の存在を情宣し、周知の事実として歴史に位置づける取り組みが必要である。地方自治体が保管している関連の公文書で公開された場合もある。本書は、新たに発見された著者所蔵の公史料とともに、これまで各書に分散していた史料・文献を整理して検証・解説を加えて、「史料が証する」として、一冊にまとめたものである。(あとがきより)
目次: はじめに 史料は真相の証である ⑴ 政府答弁「調査しても記録が無い」を諫める 1.日弁連「勧告」「調査報告書」 2.「非開示=記録が無い」の不誠実 ⑵ 新史料「警視庁㊙通達綴」等による補完
Ⅰ.大震災時に於ける朝鮮人の虐殺 ⑴ 日本人被災者が朝鮮人被災者を殺戮したジェノサイド 1.東京、横浜も瓦礫の焦土と化す未曽有の大震火災 2.軍隊の出動と武装した自警団 3.虐殺事件の責任から逃避する官憲 ⑵ 朝鮮人虐殺を否定する偏向に屈した神奈川県教委 ⑶ 歴史を改竄し、被害者を冒涜した工藤氏の著作 ⑷ 史料を正しく分析し、虐殺の真相に迫らねばならない
Ⅱ.追悼を妨害する民族差別者の蠢動 ⑴ 都知事は、朝鮮人犠牲者への追悼文を拒否した ⑵ 追悼式典を妨害するヘイト団体の登場
Ⅲ.虐殺犠牲者数は如何に把握されたのか ⑴ 政府・官憲は、虐殺事件・調査の責任から逃避した ⑵ 戒厳令下に於ける軍隊の殺戮は免責された ⑶ 統制と妨害で、朝鮮人虐殺の調査は困難を極めた 1.「独立新聞」に掲載、朝鮮罹災同胞慰問班の調査A 2.吉野作造氏に託された朝鮮罹災同胞慰問班の調査B 3.司法当局による自警団に対する捜査・立件の記録 4.全く隠蔽された軍隊による朝鮮人虐殺の記録 5.朝鮮総督府の震災弔慰金、戦後韓国の調査記録 a.弔慰金を渡された830名の遺族名簿は? b.戦後、韓国李承晩政権による調査資料 ⑷ 虐殺の証言が封じられ、遺体が焼却・隠蔽された 1.大震火災の死者は、どのように処置されたか 2.虐殺された朝鮮人死体は率先して焼却隠蔽された 3.死体写真は禁止、焼却隠蔽の実相 4.死体集積人数が記載された公地図の存在
Ⅳ.流言蜚語と「戒厳令」下の大虐殺 ⑴ 警察体制の瓦解と治安の危機 1.内務省官憲からの「戒厳令」要請 2.「暴動」の嘘と「戒厳令」の施行 3.国会で、デマを流布した官憲の責任が問われた ⑵ 戒厳軍隊の出動と殺気立つ自警団 1.戒厳軍の配置と活動 2.「朝鮮人暴動」のデマと人心不安 3.「不逞」朝鮮人から「順良」への取り繕い ⑶ 強制収容された朝鮮人たち 1.凄まじい殺戮から検束・収容へ 2.「順良な」朝鮮人と相愛会の「同化」 3.要視察者に加えて要注意者をブラックリストに!
Ⅴ.言論統制下で新聞はどう報じたか ⑴ 拡散された「不逞」朝鮮人のデマ ⑵ 官憲・戒厳軍の責任は自警団に押し付けられた ⑶ まやかしの検挙・裁きで「処置済み」を謀る
Ⅵ.隠された、官憲・軍隊による朝鮮人虐殺の実相 ⑴ 公記録「震災警備の為兵器を使用せる事件調査表」 ⑵ 「朝鮮人は引きずり下ろされ、白刃と銃剣下に倒れていった」 ⑶ 「朝鮮人を兵隊が叩き殺しているぞっ!」 ⑷ 銃剣で突き殺し、死体は側の兵士が積み重ねた ⑸ 警察は、自警団による朝鮮人虐殺を野放しにした 1.警察署の貼紙「不逞鮮人の暴動を警戒せよ」 2.㊙通達「警察官は、不逞鮮人の真偽を言わザル」
Ⅶ.自警団による朝鮮人虐殺の実相 ⑴ 検挙された朝鮮人虐殺の犯罪は一部に過ぎない ⑵ 埼玉県本庄事件:移送が妨害され、警察署が襲われた ⑶ 埼玉県神保原事件:トラックで移送中の朝鮮人を襲撃した ⑷ 埼玉県熊谷事件:喊声を上げて朝鮮人に襲いかかった ⑸ 埼玉県「通牒」:「不逞鮮人へ一朝有事の対策を講じよ」 ⑹ 群馬県藤岡署事件:保護されていた朝鮮人を惨殺 ⑺ 千葉県船橋事件:護送中の朝鮮人たちを襲撃した ⑻ 千葉県我孫子町自警団は、逃走の朝鮮人を惨殺した ⑼ 海軍の無線所長が「朝鮮人は殺してもいい」と言った ⑽ 横浜「警報で自警をする。庭先に死体がそのまま放棄」 ⑾ 横浜市中村町、「天下晴れての人殺しだからね」 ⑿ 白髭橋で見た朝鮮人虐殺の惨状 1.「何組もの朝鮮人が縛られて死んでいた」 2.朝鮮人を殺すたびに「万歳!万歳!」 ⒀ 御蔵橋:焼き殺して、川へ放り込んだ」 ⒁ 月島、「針金で縛って、石炭の炎の中へ放り込んだ」 ⒂ 千田是也、「千駄ヶ谷で朝鮮人とされて殺されそうになった 」 ⒃ 千歳烏山事件:神社の椎木植樹と虐殺の弔い
Ⅷ.朝鮮人たちを守った日本人がいた ⑴ 神奈川県鶴見警察署長「収容した朝鮮人・中国人たちを守った」 ⑵ 千葉県丸山村「押し掛けた暴徒から朝鮮人を村ぐるみで守った」 ⑶ 神奈川県田島町「町として神社境内に朝鮮人たちを匿った」
Ⅸ.中国人虐殺の実相を直視する ⑴ 仁木ふみ子氏が進めた日本側の調査・研究 ⑵ 労働者たちが狙われた大島町事件 1.「この屍体は、朝鮮じゃなくて、支那だよ」 2.多くの中国人虐殺と強制収容 3.帰国者の証言に基づく明晰な調査 ⑶ 戒厳軍に暗殺された王希天氏 1.愛国者にして労働者の支えであった 2.軍・官憲は、暗殺しながら「行方不明」と誤魔化した ⑷ 今や、軍隊の犯罪だったと露呈している 1.大島町事件:戒厳軍「全部殺害、支那労働者の説」 2.王希天暗殺:「戒厳軍の旅団・連隊幹部の裁可による」 a.久保野一等卒の日記 b.遠藤中将の日記 3.「仁に仇をなす」誤りを重ねるのか a.中国は、誠意ある震災救援を行った b.わずかな死傷者?と賠償金の不履行 C.日本政府は、公約と責務を守らねばならない
Ⅹ.社会主義者・労働運動家の拘束と虐殺 ⑴ 亀戸事件:警察署内で労働運動家たちが殺害された 1.労働運動家も「主義者」として拘束された 2.「騒擾罪」をでっち上げられ、労働運動家は虐殺された 3.凄惨な虐殺は目撃された 4.荒川河川敷の虐殺死体は、掘り出され隠蔽された ⑵ 甘粕事件:社会主義者大杉栄、伊藤野枝らの虐殺 1.官憲・軍部は、民主運動、社会主義を敵視した 2.憲兵が、大杉栄、伊藤野枝を拉致・惨殺した 3.殺害者甘粕大尉を「憂国の士」と称える軍法会議 ⑶ 朴・金子大逆事件:狙われた朝鮮人の社会主義者 1.特高警察に「要視察」とされた独立運動家・社会主義者 2.デマ「朝鮮人・主義者が暴動」のスケープゴートにされた 3.法廷陳述で、天皇制軍国主義を批判した
Ⅺ.新たに見据える虐殺事件の真相 ⑴ 習志野連隊が朝鮮人を自警団に渡し殺させた 1.虐殺された死者は何千人、拘束は一万六千余人 2.「村で収容所の朝鮮人を殺した」証言は事実であった 3.「おかしいようなのは、引っ張り出して殺した」 ⑵ 福田村事件、虐殺された行商人の一行 1.「朝鮮人だけでなく、日本人も殺されたのです」 2.裁判は、「不逞」朝鮮人の誤殺事件として扱われた 3.よみがえった事件は残酷・悲惨そのものだった 4.被害者側の生存者の証言が明るみに出る 5.部落・民族・排外の差別が交錯した虐殺事件 ⑶ 映画「福田村事件」を批判する 1.民族差別に、よそ者排除、部落差別が加わった事件 2.映画「福田村事件」を観た人、観る人へ 3.映画「福田村事件」上映にどう対処すべきか ⑷ 木本事件、自警団に襲撃された朝鮮人労働者の飯場 1.木本隧道、「我が町の栄えゆく一歩」 2.追悼碑から被害者の立場を知る 3.木本事件の経過(地方裁判所「予審決定」1926.5.3を参考) 4.朝鮮人虐殺を「義挙」「町の為」とされた差別 a.「我知らずブルブルと震えていた」 b. 当時の新聞報道はどうであったか c.大震災での朝鮮人差別は根付いていた 5.「差別する人の心が啓かれることを祈る」 ⑸ 水平社と関東大震災 1.大震災時に於ける水平社の動向 2.官憲警察に要視察団体として扱われていた
Ⅻ.追悼は断裂を糺す架橋となる ⑴ 民衆責任の自覚に根ざす追悼を ⑵ 虐殺された無念を刻んだ追悼碑・墓碑 1.本庄事件の朝鮮人犠牲者の追悼碑 2.虐殺された朝鮮飴売りの墓碑 3.片柳事件:遺族まで辿り着いた墓碑
あとがき
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