引揚げ文学論序説 新たなポストコロニアルへ
上製
朴裕河
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出版社:人文書院 |
出版年:2016年11月 |
コード: 212p ISBN/ISSN 9784409160992 |
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1945年8月、帝国日本の解体とともに満洲、朝鮮、中国から数百万の人々が帰国する。その中には後に作家となり、苛酷な引揚げ体験を苦しみながら表現したものたちがいた。本書では試みにそれらを「引揚げ文学」と名付ける。戦後史が欠落させた外地の記憶と植民者の複雑な経験は、戦後史そのものの再検討を要求するだろう。『和解のために』『帝国の慰安婦』の著者による、画期的戦後文学論。
目次: 「引揚げ文学」を考える――序にかえて 1 引揚げの忘却 2 「引揚げ文学」とは何か 3 「日本近代文学」の組み替えは可能か 第Ⅰ部 総論 おきざりにされた植民地・帝国後体験――「引揚げ文学」論序説 1 忘れられた「引揚げ文学」 2 少年・少女たちの引揚げ文学 3 定住者の権力と転倒された差別 4 記憶の抑圧と封印 5 子どもの可能性――植民地・ジェンダー・階級 6 当事者=非定住者感覚から 第Ⅱ部 各論 定住者と、落ちていく者と――『明暗』における小林登場の意味 1 明・暗の時代 2 津田と小林――不安を抱きしめて 3 小林と朝鮮 4 定住の条件 5 恐怖・排除・不安 引揚げ・貧困・ジェンダー――湯浅克衛『移民』に即して 1 棄民・移民・開拓民 2 錯綜する加害と被害 3 貧困とジェンダー――引揚げ者の戦後 4 当事者に寄り添う 「交通」の可能性について――小林勝と朝鮮 1 痛みと恥――「交通」の回路 2 支配と恐怖――「交通」の隘路 3 暴力と「交通」 内破する植民地主義――後藤明生『夢かたり』論1 1 「夢」としての植民地 2 人種化の空間 3 境界を越えるもの 4 混交する植民地・混交する言葉 5 植民者のトラウマ――内破する帝国主義 植民地的身体の戦後の日々――後藤明生『夢かたり』論2 1 「夢かたり」「鼻」――「半人前」の植民地風景 2 「虹」――植民地的身体の二つの精神風景 3 「南山」――命と死の空間 4 「煙」――不安とやすらぎと 5 感覚を描くことの意味 戦後思想と植民地支配――まとめにかえて 1 戦争の記憶、支配の忘却 2 棄民から「記憶」の棄民へ 3 忘却への警告 4 当事者の忘却と定住者中心主義 あとがき 初出一覧 人名索引
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