中国ビジネスに関わる人のための 「反スパイ法・スパイ罪」入門
村尾龍雄
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出版社:幻冬舎 |
出版年:2024年08月 |
コード: 204p ISBN/ISSN 9784344948150 |
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日本にとって最大の貿易相手国である中国には、仕事などで滞在している日本人が10万人以上いますが、日本のビジネスマンがスパイ容疑をかけられ拘束されるケースが相次いでいます。
なぜ逮捕されたのかが明確にされず、長期間拘束されたまま帰国できないことも多く、現地に拠点を置く日系企業関係者や日本にいる家族には不安と動揺が広がっています。
スパイに関する規制法として、中国には反スパイ法と、刑法のスパイ罪があります。反スパイ法は違反しても行政処罰を受けるのみで、拘留されたとしても最大で15日以下であり、年単位で拘束されることはありません。一方で、刑法のスパイ罪は刑事罰が科せられる法律で、長期にわたる身柄拘束や服役の根拠となります。 スパイ容疑で拘束・逮捕されるリスクを回避するためには、反スパイ法と刑法のスパイ罪について、抵触する行為や罰則が科せられる要件をしっかりと理解することが重要です。
著者は、日本国内23カ所のほか、北京、上海、香港など海外9カ所に拠点を有するアジア渉外業務を主に取り扱う専門家グループのCEOです。日本企業のアジア進出のサポートや中国事業に関わる法務、会計、税務のコンサルティングで30年近い実績をもっています。弁護士として、日本人がスパイ容疑で身柄を拘束され訴追された刑事事件で無罪判決や公訴棄却を勝ち取った経験もあります。
本書では中国で反スパイ法、スパイ罪という概念が出てきた歴史的背景や、現代の習近平政権下での人権思想にも触れながら、日本人がスパイ容疑で拘束・逮捕されないために理解しておくべき正しい知識について、余すことなく解説しています。 安心かつ安全に中国でビジネスを行うための一助となる一冊です。
なお、本書は中国ビジネスに関わる日本人、日本企業が日本において反スパイ法、スパイ罪に関する学習をする前提で執筆されています。したがって、著者は本書を中国に持参して当該学習の素材とすることを推奨しておらず、本書の企業研修目的での利用は日本国内のみとすることが最善だと考えています。
目次: はじめに
第1章 なぜ、中国における「スパイ罪」の身柄拘束者が続出しているのか 中国での身柄拘束を日本人も外国人も予測できていない 20人近くもの邦人がスパイ罪で身柄拘束されている 日本人以外の外国人も多数身柄を拘束されている アメリカが在中国の米国企業に注意喚起。中国本土への渡航の再考を呼びかけ 「10万人に及ぶ在中邦人にも突如として同種の被害が起きるのでは」という恐怖 実は一番心中穏やかでないのは中国人である 一番多く身柄拘束されているのは中国本土に住む中国人 中国周辺の台湾人や香港人も同様に心中穏やかならざる状況に 中国人富裕層の日本への移住や財産移転が始まっている 「反スパイ法違反で身柄拘束」の誤解 「反スパイ法違反で身柄拘束」と書き立てるマスコミ報道は間違いである 反スパイ法のスパイ行為と刑法のスパイ罪との違い 反スパイ法と刑法のスパイ罪に違反しないよう内部教育するのは事業者の義務である 逮捕の根拠は97年の大改正以来ずっと変わらない刑法第110条と第111条 スパイ罪を規定する刑法第110条と第111条とは 中国における刑法の考え方とは 日本の刑法と中国の刑法の違い 刑罰の対象となる犯罪の準備をしただけで「予備犯」が成立する 国家や社会の安全が基本的人権に優先される スパイ罪を犯したら居住監視のうえ、逮捕される 居住監視とは 大使館にも総領事館にも、具体的に何が起こったか知らされない 裁判になるとほとんどの場合有罪となる なぜ最近になってスパイ罪で逮捕者が続出しているのか 2013年の習近平政権誕生で「王朝が変わった」 習近平政権発足当時の時代背景とは 中国政府の根底にある、アヘン戦争以来の「敗戦国」としての記憶 社会主義体制を堅持するには強硬的な姿勢が必要だった
第2章 改正「反スパイ法」とは何か 反スパイ法の成り立ち いつ、何のためにできたのか? 反スパイ法の背後にある法律と政策の関係 2014年の全人代で「依法治国」を標榜 「依法治国(法による国家統治)」の内実である「総合的国家安全観」を具体化 何をしたら反スパイ法違反にあたるのか 反スパイ法とは 反スパイ法における「スパイ(行為)」とは 2023年7月1日、反スパイ法が改正。いったい何が変わったのか? 「スパイ」概念が抽象化され、よりいっそう曖昧に 改正「反スパイ法」に違反するとどうなる? 実は行政処罰として最大15日間拘留されるのみ 行政処罰とは 実際に反スパイ法違反で行政処罰を受けた事例 「改正反スパイ法違反で邦人は数年から十数年の拘禁刑に処せられる」という誤解 反スパイ法違反≠刑法のスパイ罪
第3章 「刑法」が規定するスパイ罪とは何か 日本の刑法と大きく異なる中国の刑法の考え方 1979年に中華人民共和国建国以降初めて成立した刑法 刑法の適用において中国共産党が最重要視する「国家安全」 日本と異なる罪刑法定主義の考え方 刑法の規定する「スパイ罪」とは 「スパイ罪」を規定する刑法第110条と第111条 2つの「スパイ罪」はどう違う? 違い① 違法行為による利益享受者が異なる 違い② 法定刑が異なる 違い③ 「国の安全に危害を及ぼした」という結果まで求められるか否か 違い④ 構成要件として予定された行為が異なる 刑法の「スパイ罪」で捕まったらどうなるか 最大6カ月間居住監視され、その後逮捕される 中国における刑事訴訟手続きの流れ 各国のスパイ罪(に類似した法律・罪名および処罰内容)に関する比較 アメリカ オーストラリア イギリス
第4章 スパイと疑われないためにはどうすればいいのか 「国家秘密」と「情報」の違いを知っておく 国家秘密とは 国家秘密を取得するだけで、刑法違反で処罰される可能性も 情報とは 日本で公開された信息であっても中国ではなお「情報」である場合がある 改正反スパイ法と刑法におけるスパイ罪の規制対象の違いとは 違反行為を避ける手がかりを法律の条文や事例から得る 法律の条文から学ぶ 事例から学ぶ 「スパイ組織」やそこに属する人々にできるだけ接触しない 中国でいう「スパイ組織」とは 「スパイ組織およびその代理人の任務を受け入れる」とは 中国共産党および政府機関関係者、国有企業の関係者ともできるだけ接触しない 国家秘密や情報を知ってしまうプロセスとは 国有企業との交流が避けられない場合はどうすべきか 「摘発された要人の周辺の人々」に該当したため摘発されるケースも もし、自社の駐在員が広義のスパイ罪に該当する行為をしてしまっていたら? 広義のスパイ罪にあたる行為を中止させる? 国家安全当局に自首する? スパイと疑われないための唯一にして最大の方法とは 広義のスパイ罪の「型」を満たさないこと
第5章 スパイ罪が成立して処罰された事例10 事例1 郊外を外国人が訪れるときに注意したい事項に関する処罰事例 軍部隊の駐屯地で秘密を探る疑わしい人物を発見 事例2 ビーチでの写真撮影に関する処罰事例 境外のために国家秘密を偵察し、不法に提供した事件 事例3 軍港付近の風景などの写真の提供をめぐる処罰事例 人をだまし、結託して国家秘密を窃取、売却 事例4 現地企業が外国から依頼されて行った高速鉄道の運行関連データの収集に関する処罰事例 事例5 チャットアプリを通じた依頼により学生が行った情報収集に関する処罰事例 境外のために国家秘密を偵察し、不法に提供した事件 事例6 軍事工業企業からの機密資料の持ち出しに関する処罰事例 軍事工業エンジニアが秘密関連資料を持って離職、7年の刑に 事例7 重要人物の行動予定の漏洩に関する処罰事例 F氏のスパイ事件 事例8 公務員の副業に関する処罰事例 ネットワーク偽装の背後にある違法犯罪を見極めよう 事例9 国の原子力発電についての秘密の漏洩に関する処罰事例 会社の副総経理(副社長)が国の原子力発電の秘密を漏洩し、17年の刑を受ける 事例10 宇宙分野の研究に関する情報漏洩をめぐる処罰事例 警鐘 海外での罠 市民に向けての注意事項
第6章 反スパイ法とスパイ罪を正しく理解するために、中国で強化される国家監視体制の全貌を知ろう 反スパイ法と同じ政策に基づいて制定された法律はあるか 反スパイ法と並んで成立した法律群 国家安全法 国家情報法 ネットワーク安全法 データ安全法 個人情報保護法 反テロリズム法 香港国家安全維持保護法 香港国家安全維持保護法の成立 香港基本法では香港の国家安全保障は香港が決めるとされていた 中国はなぜ香港国家安全維持保護法の制定に踏み切ったのか 日本での言動もチェックされている 新たな中国の政策方向に合わせた新たな社内教育が必要である 大使館や総領事館は本気で邦人保護を図ってくれるのか
おわりに
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