妖怪・悪鬼が跋扈する「外なる世界」と古代中国人はどのように向きあっていたのか。来歴不明の古書『山海経』を手がかりに、古代人が生活空間の外に広がる山川藪沢=「外なる世界」に住まう超自然的存在をいかに恐れまた活用していたのかを探る。1986年刊行の名著を新装新組で復刊、現在の研究状況の概説および補論2編を付す。 ●構成
増補改訂版の刊行にあたって 慶應義塾大学 古代中国研究会(文責 原 宗子)
I 文明社会の内と外 「外なる世界」/「苛政は虎よりも猛し」/野生の空間/『山海経』とは何ぞや/「外なる世界」と『山海経』/禽獣との苦闘
II 祟りの悪鬼 一 人を喰う妖怪たち 人を喰う妖怪群/赤児の声で鳴く妖怪/山の怪・九尾の狐/美姫に化ける九尾の狐/角は妖怪の表象/川に棲む「人膝の怪」/水の怪とカッパ/怪物の空間/妖怪のすみか 二 疫病神たち 厲鬼、膏肓に入る/山川は疫鬼のすみか/子供に変身する疫鬼/病の怪・蜚/独脚の疫病神たち 三 災禍をまねく怪神たち――洪水・ひでり 水害の怪神/空を飛ぶ怪蛇/猿の姿をした洪水の神/自分の名を呼ぶ妖怪/大地を焦がす旱鬼/鳥や獣の姿をした旱鬼/一首二身のひでりの怪/川を涸らす旱鬼/殷王朝の大ひでり 四 災禍をまねく怪神たち――火災・戦禍・蝗害・労役 火の怪・回禄/火の怪・祝融/怪火を銜えて飛ぶ/巨猿の怪神/蝗害の怪/穿山甲の怪/戦乱の修羅場/戦禍の怪/兵主の神/双頭・牛形の怪神/戦乱の怪/山々に棲む戦禍の怪神/画像石上の怪神たち/処罰された神々/追放された凶神たち/労役の怪神/賦役の怪 五 悪鬼博物誌(カタログ)――災いをさける方法 怪力乱神を語る/孔子と怪力乱神/山の怪・水の怪/個性ある山川の鬼神たち/鼎の上の怪神像/青銅器上の怪神/「山海図」と『山海経』/物識りと「百物録」/怪神と人間との出会い/秦始皇と湘山の神/始皇帝に怒る泰山の神/妖怪・鬼神撃退法/『白沢図』/神の咎を回避するための祭祀/神は非類をうけず
III 恵みの鬼神 一 山川の恵み 「外なる世界」の価値/「危険な空間」の魅力/山川の恵み/山川の恵みの中味/山中の霊草 二 内科・外科の薬物 疫病よけの特効薬/薬物を佩びる/眼のめまいと魂のめまい/悪夢の呪薬/難聴の薬物/難聴の呪薬/できものの呪薬/疥癬の薬物/湿布と温泉療法/白癬の特効薬/薬物としてのおたまじゃくし/不老長生と白髪染め/虫歯に啄木鳥/良薬としての毒/腫物の特効薬/四六の蝦蟇/ひびわれ・あかぎれに羊の肉/ひげや尾で飛ぶ獣/視力減退の防止薬/村と巫医 三 懐妊・避妊の薬物 懐妊の呪物/婦人があこがれた山/鹿と多産/出産の呪い/避妊と堕胎 四 家畜用の薬物 牛馬無病の呪物/馬を疾駆させる呪術/馬の調良呪術 五 善獣・瑞獣たち――悪鬼(ヒール)から善神(ヒーロー)へ 良薬は口に苦し/魑魅をおびやかす植物/不祥をふせぐ玉/怪物を撃退する怪物/凶をふせぐ天狗/雷神の腹鼓/避雷の呪術/火よけの呪鳥/陳倉山の霊鳥譚/雉に変身した童児/防火の妖鳥/悪鬼から善神へ/火伏せの怪物たち/豊穣をもたらす怪物/瑞祥の怪鳥/妖怪としての四霊/怪物としての古聖人/アバタもエクボ
IV 妖怪・鬼神たちの素顔 怪物としての山神/山神の両義性/山神と百物・怪神/『山海経』と村落共同体/善物・悪物を弁別する書/「怪力乱神を語らず」の真意/その後の妖怪・鬼神たち
図版目次と出典 参考文献 あとがき 索引
補論 『山海経』と、その周縁に位置する出土簡帛(森 和) 五蔵山経における舞――帝江と鳥の舞(矢島明希子)
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