第1部は「道教とは、宗族とは」と題して、日本人にはわかりにくい「宗族」と「道教」について、斯界の第一人者である著者が儒教との比較などをとおして概説。第2部では、いまでも暮らしに溶け込んでいる東南アジア各地の道教施設(道観宮廟)や宗族に関係する施設(会館・宗堂)を著者自身が訪れ、見聞した事柄を紹介。本書は、中国ならびに華人社会における宗教や信仰の情況、および「宗族」という社会システムの理解に役立つだけでなく、一般には紹介されることの少ない道観・廟などのガイドブックとしても有用である。 ●編著者のことば 著者の願いは、商用、観光などを目的とされる時に、料理や観光スポットのほかに、寺廟のこと、宗祠のことを少しでも知っていただくことである。(中略)寺廟に祀られている神様のことでも、日本人が神社の神様のことをほとんど知らないのとは違って、少々年輩の人なら神様の素性はほぼ承知されている。華人は私たち日本人と同じ容貌をしているのであるが、文化的歴史的背景がまったく異なっている。このことに、どうか気づいていただきたい。(本書「まえがき」より)
●構成 まえがき 第1部 道教とは、宗族とは 1.道教とはなにか 2.民間における儒教と道教 3.宗族とはなにか 「孝」は宗族制における実践規範/宗族と宗譜/むすび 4.宗族と復讐 はじめに/一、宗族の団結=繁栄/二、宗族の競争=復讐(械闘)/三、呪符による守護/むすび 第2部 各地の道教と宗族 1.バンコク・ペナン・マラッカ・クアラルンプール華人街の道教 一、バンコク華人街の寺廟 本頭公廟/報徳堂/呂帝廟/玄天上帝廟 二、マレーシア華人のなかの道教 清水祖師/天公壇/拿督公/和勝宮/北添宮/真空教道堂/南天宮/仙師四師堂 三、マレーシアの福建会館、呪符 2.シンガポール華人街の住居・墓地・道観 【附】華郷としての厦門・泉州・香港の道教 一、建築 ショップハウス/五脚基/高層建築 二、墓地 三、会館、公会・総会、宗祠 四、道観宮廟 城隍廟/金蘭廟/麟山亭/大伯公/東嶽大帝/玉皇殿/玉皇大帝/孔子公/鳳山寺/保赤宮の「開漳聖王」 五、シンガポール道教総会 【附】華郷としての厦門・泉州・香港の道教と宮廟 厦門で/香港で 3.マニラ華人街の道教と墓地 宝泉庵正炉/石獅城隍廟/天后宮/青陽石鼓廟/九霄大道観/大道玄壇/泰玄都総壇/臨濮堂宗祠/華僑義山 【附】華郷としての晋江の道教 崇真殿/宝泉庵 【附】マニラ華人社会の結合力―同郷会館・宗親会― 4.金門島と鹿港の道教宮廟と家廟 金門島訪問/金門島再訪/鹿港の宮廟と呪符 概観 東南アジア華人社会の道教信仰と宗族的結合 タイ・マレーシア・シンガポール・フィリピン 初出一覧 あとがき
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