お詫び 『台湾新文学史』下巻に収録の「索引」の中に、誤植が見つかりましたので、ここにお詫び申し上げますと共に、お知らせいたします。
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本書の大きな特徴は、ポストコロニアル史観に立った「台湾新文学の時期区分」をもとに論述していることである。日本統治時代を「植民地時期」(一八九五~一九四五)、戦後の国民党支配の時代を「再植民地時期(一九四五~一九八七)」、そして戒厳令解除後を「ポストコロニアル時期(一九八七年~現在まで)」の三段階である。この区分のなかで、台湾の新文学の複雑な発展状況がダイナミックに語られている。本書は、台湾新文学を知るうえで必読の書である。下巻巻末には、訳者による詳しい「解説」と「日本における台湾文学出版目録(1954年〜2015年)」、「人名・事項・書名索引」を収録する。
【関連書籍】
台湾新文学史(上) 陳芳明/下村作次郎、野間信幸、三木直大、垂水千恵、池上貞子 訳 東方書店 2015年12月 4,500円+税
中国当代文学史 洪子誠/岩佐昌暲、間ふさ子 編訳/武継平、宮下尚子、甲斐勝二 訳 東方書店 2013年12月 7,000円+税
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●編著者のことば
『台湾新文学史』が正式に出版されたのは二○一一年十月である。最初に第一章を完成した一九九九年から、十二年が経っていた。本書は新しい世紀の産物だと言えるし、また台湾の完全なる民主化以降の著作でもある。もし権威主義時代であったなら、本書のなかの多くの思想やアジェンダはおそらくことごとく政治のタブーに触れたであろう。私はベビーブーマー世代の生まれで、二二八事件を経て、白色テロの時期を過ごし、戒厳令の時代を歩いてきた。私はかつてブラックリストに載せられ、海外で流亡すること長く十五年におよんだ。私は典型的な思想犯で、出版した本は発禁に遭った。あのような苦痛の経験のすべてが本書を執筆する力となった。私はこの厚い文学史を個人の歴史の証人とすることを喜び、暗黒の時代が捲土重来しないことを望んでいる。(「日本語版のための序」より)
●構成 下巻 第一六章 現代詩の追及と成熟 詩の急速な現代化 現代詩の抒情伝統 第一七章 台湾女性詩人と散文作家のモダニティの変容 台湾女性詩学の創造 台湾女性散文創作の開始 台湾女性散文のモダニズム転換 第一八章 台湾郷土文学運動の覚醒と再出発 『台湾文芸』――日本統治時代と戦後世代の伝承 鍾肇政――台湾歴史小説の創建と企画 葉石濤――本土文学理論の構築 『笠』詩社の集結――モダニズムからリアリズムへ 政治的無意識の発掘 第一九章 台湾郷土文学運動における論戦と批判 郷土文学は合流して運動となる 新世代詩社と新詩論戦 新詩論戦の延長――『秋葉』と『家変』への批判 りんごと薔薇――帝国主義批判 一九七七年――郷土文学論争の爆発 季季の意義――郷土文学と現代の結合 一九七〇年代台湾小説の先駆者 第二〇章 一九七〇年代台湾文学の伸展と転化 宋沢萊の小説の芸術的達成 戦後世代台湾出身作家による台湾エクリチュール 郷土文学運動における詩と散文 一九七〇年代の朱西甯、胡蘭成と三三集刊 第二一章 一九八〇年代に興った台湾周縁の声 台湾文学の名を正す 一九八三――ジェンダー論の登場 台湾同性愛文学の版図の拡張 台湾政治小説勃興の意義 原住民族意識の覚醒およびその文学 散文の創作と自然エクリチュールの芸術性 第二二章 衆神喧噪――台湾文学の多重奏 一九八〇年代ポストモダン詩の豊作 ポストモダン小説の出現 一九八〇年代に台湾に回帰した海外文学 馬華文学の中国性と台湾性 第二三章 台湾女性文学の意義 施叔青小説の巨大な歴史的構造 台湾女性小説の台頭とその特色 一九八〇年代の台湾女性詩の特質 漂泊の旅から自己の位置設定に至った台湾女性の散文 第二四章 次世代の台湾文学繁栄のために 齊邦媛と王徳威の文学事業 一九九〇年代から新世紀までの文学状況 新世紀の文学的繁栄を迎えて 解説 陳芳明著『台湾新文学』の特色 下村作次郎・野間信幸・三木直大・垂水千恵・池上貞子 一、著者について 二、テキストについて 三、本書の特色 日本における台湾文学出版目録(1954年〜2015年) 赤松美和子 索引(人名・事項・書名) 台湾新文学史(上)
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