華南 広東・海南の文化的多様性とエスニシティー
/人類学専刊
上製
瀬川昌久
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出版社:風響社 |
出版年:2022年12月 |
コード: 272p ISBN/ISSN 9784894893269 |
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中国南部を彩る文化のパッチワーク。
その多様性は中国の中でも異彩を放つが、そこは文化的差異やエスニック・グループの生成・維持の関係という、人類学にとって普遍的な課題への挑戦の場でもあるのだ。
(以下、本文「序」より) 本書は、筆者がこれまでの約四〇年間にわたる研究者生活の中で、「宗族」とならぶ主要な研究テーマとしてきた中国東南部・広東省、海南省の地方文化や、その地域に暮らす人々のエスニシティーの問題について、折々に発表してきた論文を集約したものである。同地域には、極めて多様な地方文化が共存しており、またそれに基づいて自他を区分する多様な地域集団の自己意識が存在しているが、そのことが同地域の顕著な特徴のひとつとなっている。本書は、そうした中国南部地域のもつ文化的・社会的な特色を提示するとともに、それを題材とすることにより、文化的差異とエスニック・グループの生成・維持の関係という普遍的な問題についての考察を行うことを目指す。
目次: 序
第一章 広東漢族の文化的多様性──本地人と客家の年中行事を中心として 一 はじめに 二 地方志の利用価値についての民族誌論的考察 三 広東各地の年中行事 四 地方文化の多様性を生み出すもの
第二章 漢族の地方文化と宗族──広東省海豊県の調査から 一 はじめに 二 海豊県漢族の方言分布 三 尖米話系漢族──西崗羅氏 四 客家語系漢族──西坑戴氏 五 海豊話系漢族──黄山圍黄氏 六 漢族のサブグループと地方文化
第三章 広東ローカリズムと中華ナショナリズム──南雄珠璣巷をめぐる考察 一 はじめに 二 南雄珠璣巷伝承についての学術的解釈 三 南雄珠璣巷における歴史公園の建設 四 珠璣巷と宗親会ネットワーク 五 珠璣巷の諸表象とナショナリズム 六 歴史の連続性と中華ナショナリズム
第四章 漢族の方言集団と地方文化──海南島儋州・臨高地域の調査から 一 はじめに 二 「儋州話」話者グループ 三 「軍話」話者グループ 四 「臨高話」話者グループ 五 「客家話」話者グループ 六 「白話」話者グループ 七 「海南話」話者ならびに「普通話」話者 八 「黎族」について 九 地域的文化集団間の境界維持について
第五章 エスニック観光と「伝統文化」の再定義──海南島南部での調査を中心に 一 はじめに 二 海南省のエスニック観光開発とリー族・ミャオ族の対応 三 貴州・広西のミャオ族における観光開発と「伝統文化」再編 四 ヤオ族、チワン族、ペー族、タイ族等におけるエスニック観光 五 中華帝国の磁場と現代社会
第六章 ヤオ族と「盤王節」にみる民族文化表象──広東省連南瑶族自治県の調査から 一 はじめに 二 「ヤオ族」の複合性と民族識別 三 連南瑶族自治県と排瑶 四 盤王節──民族文化表象の新たな展開
第七章 少数民族籍客家──エスニック・グループの自明性と曖昧性 一 はじめに 二 リー族である客家の村 三 ショオ族となった客家の族譜 四 エスニック・アイデンティティーの社会戦略と系譜認識 五 民族集団イメージの普及と文化の資源化
第八章 華南地域文化研究の四〇年をふり返って
跋
引用文献
索引/地図・写真図表一
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