●香港の書店事情
世界42都市の文化特性を比較した「World Cities Culture Forum」(世界都市文化フォーラム)の統計によれば、香港(人口約740万)の書店数は1,312軒(2016年調べ)。ただし、この数には、新聞や雑誌などを販売している露店のニューススタンドや本を取り扱っている文房具店なども含まれるので、すべてが純粋な「書店」とは言い切れないが、それでも香港は、「本」に触れる機会が多い街ではないかと思う。ちなみに、香港の人口も面積も倍近くある東京(人口約1,351万)の書店数は1,646軒(2016年調べ)、書店ブームと言われる台北(人口約268万)では441軒(2017年調べ)となっている。
香港で最もよく見かける書店は、聯合出版グループ傘下の三大チェーン店「三聯書店」「中華書局」「商務印書館」である。同グループのサイトによれば、香港全土で計約50店舗があり、年間20万冊以上の書籍を売り上げている。同グループは、書店などの小売事業以外にも、出版・発行・印刷業務も行っており、所属する出版社と書店の営業額で、香港の書籍市場の8割を占めるそうだ。他には、台湾の「誠品書店」やシンガポールの「大衆書局」が、大型ショッピングモール内によく支店を出している。
一方、個人経営が多い独立書店は、地価の高い香港ならではの家賃問題があるため、1階路面店を出すことは珍しく、家賃が安く押さえられる雑居ビルの2階以上または地下に店を構えるケースが多い。独立書店の先駆けとも言われる艺鵠書店はビルの14階、昨年オープンしたばかりの20代オーナーの貳參書房は12階にある。2016年にオープンした画廊と音楽バー併設のMuse Art and Booksの店舗はホテルの地下だ。
独立書店は住所を知らないとたどり着けないような隠れ家的な店舗が多く、街歩きしながら偶然に見つけるのはなかなか難しい。路面店ではないため、看板等も目立つところに出せず、どうやって外に書店の存在をアピールするのか不思議に思っていたところ、昨夏、独立書店に関するトークイベントを聞きに行く機会があり、独立書店の宣伝方法が話題に上った。そのイベントでの話によれば、オーナーが若い世代だけにSNSを活用した情報発信と口コミがメインになっているそうだ。
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