2001年度日本ビジネス中国語学会
第十回ビジネス中国語(商务汉语)
検定試験 2級 解答と解説
第一問 中文日訳
1. 中国のWTO加盟に関する15年に及ぶマラソン交渉が決着した。
2. 今回の会談は、元々9月13日の開催予定であったが、アメリカがテロ襲撃を受けたことにより、4日間延期となった。
3. 労働集約型の業種は続々と低コストの発展途上国にシフトしている。
4. 上海中華会計士事務所の監査では、登録資本金は全額払込済みとなっている。
5. 合弁企業の各出資者は、現金、現物、工業所有権等で出資することが出来る。
6. 会社は規模が小さければ、比較的大きなマーケットリスクに対抗出来ない。
7. 当該会社の純益率は約8%で、同業者の中では収益レベルは高い方である。
8. 今回、ノックダウン方式が採れるか、御社にて良く考えて頂きたい。
9. 茲許同封、B/L、インボイス、保険証券、パッキングリスト、各一部を送付しますので、ご査収下さい。
10. 第一回取引分が到着後一ヶ月も経たないのに、貴方より損害賠償要求の書簡を受けるとは、全く思いもよらぬことです。
解説
1.
入世:加入世界貿易組織の略、世界貿易組織はWTO、略して世貿とも言う。日本語では世界貿易機関。中国の加盟交渉は、以前のGATT復帰交渉から今回の加盟まで15年かかった。
2.
恐怖袭击:テロ攻撃、テロリストは恐怖分子と言う。今回の同時多発テロのことを中国では、9.11事件と名づけている。
3.
劳动密集型:労働集約型、因みに資本集約型は“资本密集型”。
4.
注册资本:登録資本のこと。
到位:所定の位置につくこと。ここでは、資本金が払い込み済みであることを言う。
5.
工业产权:工業所有権のこと。因みに知的所有権は“知识产权”と言う。
6.
市场风险:マーケット・リスク
抵御:防ぎとめ、対抗すること。
7.
上游水平:川の上流、即ち収益レベルが同業の中では“上の方”に位置することを指す。
能否:口語では能不能のことで、口語の“是不是”は文章語では“是否”となる。
来件装配:材料を持ち込み組み立てること、即ちノックダウンのこと。
9.
ここでは、船積書類の名称を問うている。
提单:船荷証券、B/L。
发票:一般的には領収書を指すが、ここでは“送り状”“インボイス”のこと。 保险单:保険証券。“保单”とも言う。
装箱单:パッキング・リスト、包装明細書。
10.
首批货:取引最初の貨物、ファースト・ロット。
实为:口語では“真是”。「実に、全くもう。出乎意料之外:予想外である。
第二問 日文中訳
解答中、下線のある部分は後ろの( )内語彙と互換可能である。
( )内のは省略可能である。
1)参考解答
你方考察各地,对科技进行交流的费用,均由我方负担(承担)。
访问各地进行考察,在科学技术方面交流的费用,都由我方承担(负担)。
我方都负担你方考察各地,进行科技交流的所有(全部)费用。
解説:漢語の「视察」は「首长」といわれる方々にのみ使用。日本語の視察は通常「考察」と翻訳する事。科学技術は現在よく「科技」と略する。分野は「领域」がベターだが、思い付かなければで「方面」もよい。全ては「都」「均」「全部」一切」「所有」
のいづれでもよい。負担は、他人の分については「负担」「承担」のいずれでもよい。自己負担するという場合は「自理」ともいう。
用語:視察訪問、分野、全て、負担
2)参考解答
关于贵方提出的问题,资料(数据)准备好以后,再联系。
对贵方提出的问题,等资料(数据)都准备好(完毕)后,再给联系。
解説:漢語の「提起」の目的語には訴訟・クレームなどがつき、話しの中で「提起过」という際に使用。日本語の提起したは、漢語の「提出」「提出来」に相当、逆に日本語の「提出」は、レポート、論文、議案書を上司に出したという意味で使用さ
れるので、漢語には「提交」と翻訳する事。……次第は「以后」あるいは「等……以后」または「一俟」を用いても良い。改めて連絡するは「再联系」「再给您联系」でもよい。
用語:提起、データ、出来次第、改めて
3)参考解答
我认为贵公司产品,完全符合日本规格,一定会有销路。
贵(公)司产品,跟日本规格完全一样,所以我想定会有销售渠道的。
解説:「商品」は「商品」と「製品」は「产品」または「制品」と翻訳する事。製品は出来上がっているが、すぐ商品として売り出せない。ラベルを貼ったり、値札を付けたり、説明書を添付したり再包装して始めて商品になるからである。あるい
は「货」「货物」と訳してもよい。「货」「货物」には「商品」「产品」「零部件」「原材料」など全てが包括される。規格にぴったりのベターな訳は「完全符合规格」。しかし「符合」が思い浮かばなければ「完全一样」でもよい。販路のベターな訳は
「销路」だが「销售渠道」でもよい。きっとは「一定会」でも「定会」でもよい。
用語:製品、規格にぴったり、きっと、販路
4)参考解答
我们想了解贵方供货(供应货物) 能力和销售条件,特此致函。
希望知道你方供应货物的能力以及卖价・条件,现写此封信。
解説:貨物供給能力のベターな訳は「供货能力」だが、「供应货物的能力」でもよい。販路条件のベターな訳は「销售条件」だが、「出售条件」「卖价・条件」でもよい。ここに書簡をしたためましたのベターな訳は「特此致函」だが、思い付かなければ「特此(兹)写信」「现(在)写此封信」でもよい。
用語:貨物供給能力、販売条件、書簡をしたためる
5)参考解答
关于这次订购产品的报价, 尽量(最好)不要超过去年的水平。
对这次订的货,报价格时希望尽量(尽可能)不要超过去年的水平。
解説:「注文」は「订货」または「订购」。「できれば」は「尽可能」「尽量」と訳するのがよいが、「最好」を用いても良い。
用語:注文、オッファー、できれば、超えないよう
第3問 機能語の選択問題(各2点)
1) 既然
日本語訳:「商品に保険がかかっている以上は、関係する保険会社へ賠償を要求されるのがよいでしょう。」
複文の意味を決める大きな要因は前文と後文との論理的なつながり方である。ここでは空欄のない後文の意味を正確に読み取れば、正解は自ずと“既然”「…であるからには」が選ばれる。他の選択肢“即使”は「たとえ…でも」、“虽然”は「…であるといえども」の意味なので、ここでは誤り。
2)紧张
日本語訳:「モーターへの御注文に感謝いたしますが、当方の供給がタイトなため、すぐに品をお渡しすることができません。」
三つの選択肢はいずれも同じ方向の意味をあらわすものであるが、ここではビジネスの常用表現として“供货紧张”を選ぶ。“紧张”は「余裕がない、逼迫している」ことを表す点で日本語の同形語「緊張」とは違っている。
3)宗
日本語訳:「私たちの最初の交易が今後の業務における長期にわたる快いおつきあいのさきがけとなりますよう心から希望いたします。」
「交易、取引き、売り買い」などひとまとまりの商的行為をカウントする時の量詞は“宗”を用いる。
4)与
日本語訳:「契約履行の便のために、その機械についてすでに数多くのメーカーと連絡をとりました。」
動詞“联系”「連絡する」と相性よく組むことのできる介詞を選択肢の中から選び、正解の“与”「…と」を求める。この“与…联系”「…と連絡する」は主に書面語で使われ、口頭語では“跟…联系”となることが多い。
5)把
日本語訳:「国名と商標が容器の外部にぜったいに出てこないようにお願いします。」
“不出现在容器的外面”「容器の外部に出てこない」の意味上の目的語である「国名と商標」を述語の前に引き上げる役目をする介詞を選ぶ。よって正解は“把”となる。
副詞“务必”は「ぜったいに、きっと、かならず…せねばならない」の意味。
6)期货
日本語訳:「ご入用の品は暫時在庫がありませんが、先物として供給は可能です。」
“有+N+可+V”のパタンで「VできるNがある」の意味になる。したがって、ここでは選択肢の中からN(名詞)になっているものを選べばよい。選択肢を検討してみると“期货”は名詞で「先物(さきもの)」、“销货”と“盘货”はそれぞれ「品を売る」「棚おろしをする」という動詞+目的語のフレーズである。したがって、消去法によっても正解の“期货”が得られる。
7)一定
日本語訳:「運送中の損傷を最低限に押さえるために、必ず堅牢な木箱で品物を包装しなければならない。」
“须”「せねばならぬ」は書面語に多く使われる文言の助動詞で、現代語では“要”に相当する。そこで“一定要…”のパタンを模して、“一定须…”「必ず…しなくてならない」の表現を作ればよい。
8)以便
日本語訳:「貴方の製品を当方の得意先に紹介するために、手仕事用道具に関するすべての資料をお送りください。」
ここでも(1)と同じように、選択肢を見きわめるためには複文の前文と後文の論理的な意味関係を正しくつかむ必要がある。そこで、後文(製品を得意先に紹介する)が前文(製品の資料を送る)の目標であることを見定めて、正解の“以便”「…しやすいように」を選べばよい。選択肢にある“免得”は「…しないですむように」の意味で、正解とは逆の意味になってしまう。
9)条件
日本語訳:「当方からのオーダーは、貴方が、暫時、他の取引先へ同様の商品を販売しないことを保障することを条件とする。」
“以A为B”「AをもってBとする」という枠の中でBの位置に入ることのできる選択肢は“准”と“条件”のふたつであるが、ここでは文意の流れから後者を選び「Aをもって条件とする」が正解となる。“条款”は法律などの文書における「条項」の意味。
10)以
日本語訳:「カタログを一部同封いたします。カタログの中には最近の市場におけるアルミ合金により鋳造された家具が含まれています。」
正解の“以”は現代口頭語の“用”に相当する書面語の介詞でもあるから、ここでは「アルミ合金」という材料を導く用法としてこれを選ぶ。
第4問 単語・ピンイン・訳語の三点セット
(折扣) zhékòu(割引) 脱销( tuōxiāo )(売切れ) 贸易顺差(màoyì shùnchā)(貿易黒字)(来样加工)(lái yàng jiāgōng )サンプル提供による加工(租船)(zūchuán)チャ-タ-船
ビジネスに関連する単語は、経済動向から貿易実務まで多岐にわたるが、それらを日本語、中国語漢字、中国語発音の「三点セット」で頭の引き出しに整理しておく必要がある。
第5問 複合問題
3つの設問から成る長文読解である。問1は第4問に似ているが、出題範囲はさらに広い。問2では虚詞の理解力と経済用語の慣用表現を見る。問3のカギは文章構成の把握にあり、特に“提高利用”と“发展服务”の切れ目を正しく理解することである。
1.(a) 人才 (b)接受
2.(A)个 (B)为
3.①外資利用の質とレベルをいっそう高める。
②工業面のみの外資利用重視から、サ-ビス貿易分野での合弁のさらな
る発展へと転換する。
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