2000年度日本ビジネス中国語学会
第九回日本ビジネス中国語(商务汉语)
2級検定試験問題解答と解説

第1問 中文日訳解説

1. 中国市場におけるコダックの感光材料販売額は、50%以上のテンポで増加中である。
   解説:原文の語順どおり「コダックの」から始めると「コダックの中国」となり、一読してすぐには理解しにくいので要注意。
   用語:递增
2. 先週末、日本銀行はデフレ危機からの脱却を理由として、一年半ぶりにゼロ金利政策の解除を決定した。
   解説:“以…为由”がセットであり、“决定”は最後までかかっている。また“摆脱”“解除”を原文同様に動詞に訳すと文章がややこしくなるので、他動詞をなるべく避け、名詞形(体言止め)で処理したい。
   用語:通货紧缩 利率
3. これらの多国籍大企業は中国での経営重点を、貿易と技術移転から生産基地の確立へと変えている。
   解説:ここの“将”は“把”の意味。“从…变为”はセット。
   用語:跨国 技术转让
4. 全国の自転車主力メ―カ―75社のうち半数以上が、赤字の増大、受注の不足、在庫の増加、生産の縮小により苦境に立っている。
   解説:四字の表現が並び、しかもそれぞれが“主谓结构”なので、訳文も調子を整えたい。ここも体言止めがベタ―。
   用語:骨干 亏损 订单 库存
5. 売り方は買い方の要求にもとづき、本契約の規定に合致しない部分については、無償交換、不足分の補充または,値引きをすべきである。
   解説:“对”は「対して」だけでなく別の訳し方もあってよい。
   用語:补发 贬低
6. われわれは香港のA社と何度も協議した結果、上海浦東地区に合弁の毛紡工場を設置することが実行可能と考える。
   解説:二つの文をつなぐため「結果」を加えた。“认为”を「認める」と訳す人もいるが、一般には「考える」が適当。
   用語:可行
7. 合意期間中、受け取り側は提供側にランニング・ロイヤリティを毎年支払う。その比率は合意された製品の純売上額の3%とする。
   解説:中国語の“协议”は「協議」ではなく「合意」。
   用語:协议 提成费 净销额
8. IT戦略会議は、超高速インタ―ネットへの集中的投資、電子商取引促進のための法律整備、インタ―ネットに精通する人材の育成を決定した。
   解説:この文でも“决定”は最後までかかっている。“旨在”は「…を趣旨、目的とする」、“完善”は「完璧なものにする、充実させる」。主な動詞は「決定した」だから、原文中の他の動詞は体言止めが望ましい。
   用語:因特网 电子商务 培养
9. 協力計画には、日本の対ロシア投資の促進、ロシアのWTO早期加盟促進のための二国間協力関係の強化が含まれる。
   解説:「含まれる」が主な動詞なので、原文にある他の4つの動詞は体言止めが望ましい。
   用語:合作 世贸组织 双边
10. 合弁企業が必要とする外貨建て支出は、アメリカ側による合弁企業製品引取りで外貨バランスを図る。
   解説:「建て」は意味を明確にするため加えた。「アメリカ側が合弁企業製品を引き取ることで」としても可。
   用語:外汇 返销 平衡

第2問:解答中、下線のある部分は( )内の語彙と互換可能。( )内はあっても、なくてもかまわない語彙。

1)昨日港での荷下ろし検査結果、貨物がかなりショートしていることが判明した。
参考解答 a:昨天在码头卸货时的检验结果,得知货物大量短缺(短重·短量)。
b:昨天在码头卸货的时候进行过检查,结果发现(查明) 相当多的(有不少的)货(物),重量(数量)不足。
解説:「港」は「港口」「口岸」「码头」と色々訳がある。「かなり」は「很~」「极~」「相当~」は+「多」「短缺」であれば良いが、「短量」「短重」の前には使えない。この場合は「大量」がよい。
契約の単位が重量(L/T,M/T,Kg等)であれば「短重」或いは「短量」「数量短缺」でもよいが、しかし契約単位が数量(ケース、ピース、件、着、点)であれば「短重」は使えない。
用語: 荷下ろし、検査、ショート
2)これは今年の人気商品であるため、メーカーへの注文が殺到しており、とても納期に間に合わない。
参考解答:
a:由于这是一个今年的红商品(很有人气的货),工厂的订单(过于)集中,实在难以按期交货。
b:因为这是今年很受欢迎的一个商品,所以工厂接到的订货单特别多,不能(无法)按期交货。
解説:「メーカ」は「工厂」以外に「厂家」「厂商」「厂方」「制造厂家」「制造厂」等の訳がある。「殺到」は「集中」「过于集中」以外に「蜂涌而来」「接踵而来」など、四字句をうまく使うのもよい。
用語:人気商品、メーカー、注文殺到、納期
3)客先の原料が底をついているので、是非期日通りに貨物を準備するよう再度工場へ連絡されたい。
参考解答:
a:因为用户快用完原料,请让厂家一定要在交期内,备好货物。
b:由于客户的原料库存不多(紧缺),请再跟厂方联系,让厂方一定按期准备货物。
解説:「客先」は「客户」「用户」「顾客」「主顾」「消费者」の訳ができるが、「客户」が一番範囲が広い。この文では「需要家」であるので「客户」「用户」のどちらでもよい。しかし中国語の「顾客」は日本語の「顧客」「顧客先」とは異なり、最終消費者を指すので、この場合使えない。「工場」はメーカーの訳を参照。ただし、「工场」では駄目であり、必ず「工厂」とすること。「連絡」は「连系」は駄目であり、必ず「联系」を使う。「期日通り」は「按照期限」「按交期」「按期」以外に「按交货期」「如期」の訳もある。
用語:客先,底をつく、期日通り、
4)お手数ですが合弁契約書などを再度詳細にチエックし、不明な点・まだ触れられていない点があれば、指摘されたい。
参考解答:
a:烦请再详细地看一下合资合同(合约)等,还有无不清楚或未涉及之处?若有,请指出。
b:麻烦您请再一次仔细看一下合资合同书,还有没有什么不清楚或者没谈到的地方?如果有的话,请给我指出来。
解説:「お手数ですが」「给您添麻烦」「麻烦您」でもよいが、どちらかと言うと口語体でああるので、できれば「烦请」がよい。「有没有」、「没有~」も口語体であるので、できれば「有无」「未~」がよい。「まだ触れられていない」は「未涉及」或いは「未谈及」でもよい。「~があれば」「~であれば」は「如果~」「要是~」「如果~的话」「要是~的话」または「~的话」のみでもよいが、どちらかと言うと口語体であるので、できれば「若」「如」を使うよう薦める。
用語:お手数ですが、まだ触れられていない
5)ご多忙のところ貴重な時間を割いて会見賜り、私共は光栄至極に存じます。
参考解答:
a:尽管在百忙中,却腾出(挤出)宝贵的时间会晤(会见我们),感到(觉得)非常荣幸(光荣)。
b:虽然很忙,但是挤出很宝贵的时间来会见了,我们觉得很光荣。
解説:「ご多忙のところ」は「虽然很忙」より「在百忙中」「在百忙之中」「在百忙当中」がよい。「貴重な時間」は「宝贵的时间」が一番よい。「貴重な時間を割く」の「割く」は「腾出」「挤出」、「会見」はどうしても良い言葉がでなければ「见我们」でも通じる。他に「接见」「会晤」「会见」等色々あるが、「接见」は国家指導者が会見する際にしか用いない。「会晤」は首脳陣間や外交上の会見、会談をする際に用いられる。「光栄至極」は「感到非常光荣」「觉得非常光荣」でもよいが、できれば「感到非常荣幸」「觉得非常荣幸」を用いる方がよい。
用語:ご多忙のところ、貴重な時間、割く、会見賜り、光栄至極


第3問

1.解答:让

解説 :「貴信で提起されたクレーム」に関して、「当社は上海支社の提供した証明書にもとづいて」、「製造工場に調査を行わせた」(让)のか、「製造工場のために調査を行った」(给)のか、「製造工場を手段として調査を行った」(以)のかを考えると、答えは“让”の「製造工場に調査を行わせた」を採るのが最もふさわしい。



2.解答:而

  解説: これは“由于P而Q”の構文、すなわち「Pが原因でQとなる」という因果関係を表す構文を使った文である。この部分は「違約によって生じた余計な費用は貴工場が

     負担する」となる。



3.解答:业已

解説:これは売り手側のセリフであり、問題の部分の前後で、「貴社が9月1日付で発注した絨毯は」ということと「必ずご指定の期日通りに荷渡しします」ということを述べている。そこで真中にくるフレーズには何が一番ふさわしいか考える。“未能”なら「生産を開始できなかった」、“业已”なら「すでに生産を開始している」、“仍无”なら「依然として生産を開始していない」になるので、正解は“业已”。



4.解答:青睐

解説:これは語彙を問う問題。「弊社の製品は国内外で評判を博しており、貴国ユーザーの〈何〉を得られると信じている」のかが問題となる。“青睐”は「好評」、“红心”は「プロレタリア革命に忠実な心」、“白眼”は「冷淡な目付き」。正解は、もちろん“青睐”である。



5.解答:经

解説:「当地の国際貿易協会の紹介を通じて、~を知った」ということであるから、動作の受益者を導く“给”を選択すると「当地の国際貿易協会に紹介する」となり、また、動作と関係のある相手方を指す“跟”を用いると「当地の国際貿易協会と紹介する」となり意味が通じなくなる。“经”は、ある状況が生じる過程を表すので「当地の国際貿易協会の紹介を通じて、~を知った」という意味になり正解。



6.解答:均

   解説:「この件に関する調査に必要な費用はすべて当社が負担する」という意味であるから、この三択では“都”「すべて」という意味を持つものを選ばなければならない。“凡”は「平凡な;一般に;総計」といった意味で“都”という意味は持たない。“尚”は「なお;まだ」という意味でこれも不適格。“均”は書面語で“都”「均しく;すべて」という意味であるから、これが正解。



7.解答:出

  解説:この文では「貴社のオファー価格は他の商社より25%高い」ということが述べたいのである。“高”の後に比較の対象を導く介詞“于”を置くと、「25%高い」ではなく「25%より高い」となってしまう。“了”をこの位置に置く用法はない。比較されているものは「貴社のオファー価格」と「他社のオファー価格」である。「25%」というのは両者の差であり、比較の対象ではない。方向補語“出”は動詞・形容詞の後につき数量的にどれだけか超えることを表す。したがって“高出25%”で「25%高い」という意味となり、“出”が正解。



8.解答:由

  解説:「売り手が5%の増減を選択することを認める」とする文意であるから、“选择”という動作の行為者“卖方”を導く介詞は“由”以外にはない。“经”は、ある状況が生じる過程を表し、“向”は動作の向かう方向を表すのでともに不適格。



9.解答:予以

解説:“加以”は二音節の動詞を目的語にとる形式動詞であるが、“加以同意”という組合わせはない。“予以”は「~を与える;~をする」という意味を持つ形式動詞であり、“予以同意”で「同意する」という意味になり、これが正解。“可以”は可能を表す助動詞で、“决定可以同意”は「同意できることを決定した」となり意味不明瞭でアウト。



10.解答:所致

解説:“上述~”以下の部分を直訳すると、「上記の状況発生の原因は製造上の欠陥によるものである」となる。三つの選択肢それぞれの意味するところをみると、“所在”は「存在するところ」、“ 所致”は「致したところ」、“ 所示”は「示すところ」であり、意味上“ 所致”を採るのが最もふさわしい。





第4問

①bèijiàn ②予備部品、スペアパ-ツ  ③ kuīsǔn  ④欠損  ⑤下岗

⑥レイオフ  ⑦佣金  ⑧yōngjīn ⑨电子邮件、伊妹儿   ⑩diànzǐ yóujiàn



第5問

1.(a)因素   (b)协作

2.(A)和,及 (B)都

3.①多国籍企業の専門化と分業は、取引回数の倍増につながり、

  ②補償貿易、(無償材料提供を受けての)委託加工、ノックダウン

解説

 第4問の解説は毎年同じ。



 第5問 長文読解は、まず全体の意味の把握が不可欠である。この文章は多国籍企業の動向に関する基礎知識があれば、さほど難解ではないと思う。3の②は貿易の基礎知識を問うもの。

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