中国の文豪と台湾郷土作家たち! 台湾・国民党政権下で長らくタブーとされてきた魯迅。その台湾での復権は、同時に日本統治期から戦後初期の台湾人作家の見直しにもつながった。本書では、80年代に入って大いに発展した台湾文学研究の成果を踏まえながら、台湾における魯迅文学受容の歴史を見直し、さらにそれと関連づけて台湾人作家の営為をあとづける台湾文学論集である。●編著者のことば 一九八七年七月、戒厳令が解除になった台湾において、それまでは制約のあった魯迅を含む中国の現代文学の閲読や研究が自由になり、魯迅については谷風出版社、唐山出版社、風雲時代出版社の三社から相次いで全集が発表されていた。これを機会に、台湾文学における魯迅の影響がどのようであったのかに興味を持ち調べていたが、その実体はなかなか明らかにならなかった。というのは、台湾においての魯迅の文学は、戦後の数年を除いては、近代文学の萌芽成立期である日本統治時代においても一九八七年までの蒋介石・蒋経国支配期においてもほぼ禁書と同様の扱いを受けてきたからだ。従来、魯迅は台湾文学界へ影響を与えたと言われながらも、魯迅受容の経緯さえ明らかではなく、その作品が具体的に台湾のどの作家にどのような影響を与えたかということについてはほとんど解明されていなかった。そこで、戦前戦後を通して台湾においてどのように魯迅文学が受容されたかという点だけでもまとめて出版できないかと考えたからだ。(「編者あとがき」より)
●構成 序 台湾新文学と魯迅(葉石濤) 1 台湾における魯迅(陳芳明)/2 日本統治下の魯迅と台湾新文学―その受容の概観(中島利郎)/3 魯迅と頼和(林瑞明)/4 ふたつの故郷―鐘理和における魯迅の影響について(澤井律之)/5 戦後初期台湾文壇と魯迅(下村作次郎)/6 魯迅思想の伝統をめぐって―台湾文化における「中国化」世界化」の相克(黄英哲) 台湾における魯迅研究論文目録/台湾新文学と魯迅関係略年表/編者あとがき/本書論文初出一覧
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