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詳細情報
歴史の周縁から 先鋒派作家格非、蘇童、余華の小説論 上製
森岡優紀
出版社:東方書店
出版年:2016年11月
コード:00818   240p   ISBN/ISSN 9784497216113
 
価格 2,640円
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文化大革命が終了後、文革の体験をテーマとした「傷痕文学」「尋根文学」が盛んになるが、1990年代を迎える前後に「先鋒派」と呼ばれる作家群が現れた。そのなかの代表的作家、格非・蘇童・余華の3人について、「先鋒派」の原点となった、それぞれの作品を詳細にテキスト分析することにより、これらの前衛的な小説が如何にして誕生したのかを明らかにする。「先鋒派」の現代文学における意味もあわせて考察する。本書は、第1部「先鋒派のはじまり」、第2部「先鋒派の文学形式」、第3部「先鋒派の周縁」の3部構成に加えて、著者のインタビューによる蘇童訪問録・格非訪問録・余華訪問録を収録する。

著者による紹介
ポストモダニズム評論家は、中国1980年代後半に現れた「先鋒派」小説の、前衛的な叙述形式と反リアリズム的な小説世界を分析して、近代小説の脱構築を目指したポストモダニズム文学と評した。しかし、本書は先鋒派小説の叙述形式はポストモダニズムを源流としているのではなく、むしろ作家の文革体験に由来すると論じた。本書で代表作家の蘇童の小説に対するテキスト分析で示したように、その叙述角度は常に少年等の社会の「周縁」的人物に照準が合わせられており、その角度から見えない世界は一切描かれていない。超越的な視点から文革の苦難を描く新時期文学と先鋒派小説を比べる時、先鋒派小説には一見して文革を描いていないかのように見えるが、実は文革体験は深層へもぐりこみ、より深い影響を与えている。自らが社会の周縁的存在であるという文革体験によって形成された意識こそが、先鋒派作家の叙述スタイルの原点であった。

構成
はじめに
 一  格非、蘇童、余華
 二  中国近代文学史における「先鋒派」
第一部 先鋒派のはじまり
第一章  蘇州の少年時代〈蘇童〉
  一  サリンジャーとの出会い
  二  蘇州の街角にて(『桑園の追憶』)
  三  初恋をめぐる二つの小説
  四  小説と真実
第二章  大人の世界への旅立ち〈余華〉 
  一  歯科医から作家へ
  二  『十八歳の旅立ち』
  三  十八歳の誕生日に起こる事件(『四月三日の事件』)
  四  カフカのような摩訶不思議な小説
第三章  「意味」を探し求めて〈格非〉
  一  創作の始まり
  二  結末のない物語(『烏攸先生を追悼す』)
  三  男の子の歌
  四  「青黄」の意味(『青黄』)
  五  「歴史」の不可能性
第二部 先鋒派の文学形式
第四章  虚構のちから〈蘇童〉
  一  『井戸のなかの少年』
  二  少年「僕」の物語:小説中小説【井戸のなかの少年】
  三  青年「俺」の物語:蘇童の小説『井戸のなかの少年』
  四  井戸のなかに映る姿
  五  現実生活を沈殿させたあとの一杯の純粋な水
第五章  深層の記憶〈格非〉
  一  『痴人の詩』
  二  母への憧憬
  三  過去
  四  反転する「わたし」と「あなた」の世界
  五  オルガンの音色に陶酔して
第六章  文化大革命と六〇年代生世代〈蘇童〉
  一   先鋒派作家にとっての文革
  二   一九七〇年代の中国(『鉄道に沿って一キロ』)
  三   イメージの漣(『舒家の兄弟』)
  四   文革中にトランプを探して(『ハートのクイーン』)
  五   紅衛兵世代と六〇年生世代
第三部 先鋒派の周縁
第七章  歴史の周縁から〈格非〉
  一   一九九〇年代以降の文化状況
  二   北伐戦役(『迷舟』)
  三   抗日ゲリラ(『オルガン』)
  四   ある男の人生と中国近代史(『周縁』)
  五   無数の「歴史」
第八章  新しい「現実」の構築へ向けて〈余華〉
  一   中国の戦争小説
  二   社会の片隅で活きる(『活きる』)
  三   国共内戦
  四   静寂の声
おわりに
付録 「先鋒派」作家インタビュー 
 蘇童訪問録(一九九九年夏)
  ペンネームについて/故郷について/青春時代と読書について/文学の伝統について/自分自身の創作について/新写実
 格非訪問録(二〇〇五年八月)
  研究と創作について/作品発表当時の小説形式における過激さについて/一九九〇年代以降の小説の実験性の弱まりについて/伝統的な方法について/思想の影響について/小説のテーマについて
余華訪問録(二〇〇五年春)
 創作について/九〇年代以降の小説について/「兄弟」について/外国での余華の影響
主要参考文献
日本における格非・蘇童・余華の主要な翻訳
謝辞
初出一覧

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■編著者紹介
神戸大学大学院文化学研究科満期退学、博士(学術)取得。京都大学大学院人間・環境学研究科満期退学、博士(人間・環境学)取得。現在は、京都大学人文学研究所・学術振興会RPD。専門は中国近代文学、東アジア文化研究。主要業績:単著『中国近代小説の成立と写実』(京都大学学術出版会、2012)。論文「『先鋒派』における『文革』:蘇童の小説から」(『現代中国』76号、2002)、「明治期雑誌と魯迅の『スパルタの魂』」、(『20世紀中国社会システム』京都大学人文科学研究所、2009)、「『社会』を描く方法をもとめて――『写実』から社会主義リアリズムへ」(『中国社会主義文化の研究』、京都大学人文科学研究所、2010)、The Reception of Modern Biography in East Asia: How Washington’s Biographies were translated?, ZINBUN No.45, Institute for Research in Humanities, Kyoto University,2015.
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