中国における浄土信仰は、隋唐期に弥陀信仰が主流となり「浄土宗」とよばれ民間に浸透し、明清期には中国民衆宗教の中核となるまでに隆盛した。本書は、各時代の浄土宗の教義内容を丁寧に解説しつつ、中国浄土宗の発展の歴史をわかりやすく論述する。 ●編著者のことば 著者は中国思想史の視角から浄土教義の展開を述べているのであるが、無神論を国是とする中国において、決して論争的ではなくどこか温かさが感じられる、かくのごとき浄土宗の歴史書が生れたことは、いくら時代が変化したからだとはいえ、苦難の時代にひそかに蓄積された研究成果の現れであり、中国における文化の底の深さを感ずるのである。(「訳者あとがき」より要約)
●構成 前言/第一章浄土宗の淵源:本生譚と本願、多種の浄土、阿弥陀佛浄土/第二章浄土宗の揺籃期:求生西方の慧遠、浄土宗初祖曇鸞/第三章弥勒信仰の盛衰:弥勒信仰の伝播、弥勒信仰の衰退、弥勒教から白蓮教へ/第四章浄土宗の成熟:浄土信仰の諸異説、承上啓下の道綽、集大成の善導/第五章浄土三流:浄土を「宗」とよぶこととその三流、迦才の「浄土論」、懐感と飛錫、慈愍流、専修称名の少康流/第六章諸宗浄土に帰す:概説、禅浄合流、 台浄合流と賢浄合流、結社念佛の風潮、浄土宗の文献/おわりに
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