●編著者のことば 中国文学が郁達夫への関心をとりもどしたのは、1980年代に経済発展がはじまって以後のことらしい。これは中国が経済発展を遂げることによって、文学のテーマが個人の内面、個我の歴史のほうに移ったことと関わりをもつかもしれない。そのことによって、研究テーマとしての郁達夫が復活したとおもわれる。かつて竹内好さんも注目し、胡金定さんもいま関心をもっている郁達夫とルソー、あるいは自我絶対主義者のシュティルナーとの内的関連がより大きく浮上してきているということかもしれない。いずれにせよ、魯迅とは別の中国文学の鉱脈の可能性をこんにち郁達夫の文学は示唆しているのだろう。(松本健一)
●構成 序 胡金定さんと郁達夫研究のこと(松本健一) I 郁達夫の小説の特徴 II 郁達夫の小説と日本文学 III 郁達夫の小説における美学と作風の変遷 IV 郁達夫の小説における感傷 V 郁達夫の日記について VI 郁達夫と西洋文学 VII 郁達夫における西洋の哲学・文学理論の受容 VIII 郁達夫の詩について 【資料】郁達夫小説一覧(付・1934年の創作中断について) 初出一覧 あとがき