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ネット用語から読み解く中国
 
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ネット用語から読み解く中国   (25)「愛国主義」
   
     
cn201209-03
タカ派紙「環球時報」WEBサイトに作られた釣魚島問題の特設サイト
 

 今回はネット流行語の解説からやや離れて、中国の今を見る上で避けて通れない「愛国主義」にスポットを当てたい。
 この原稿を書いている今、中国では尖閣問題に端を発した反日の暴風が吹き荒れている。日本商店が次々と破壊、略奪される映像をネットなどで見るにつけ、国家間の問題を解決するためになぜ中国はこのような粗暴なやり方しかできないのか、苦々しさを覚えている。
 こうした「義和団」の復活とも言われる排外主義を生んだのが、中国政府が若者に植えつけた「愛国主義」であることはしばしば指摘されている。
 ただ、微博やツイッターで本コラムでも取り上げたことのある中国のオピニオンリーダーの発言をチェックしていると、時々これはと思う良心的、理性的な書き込みに出会うことがある。先日も次のような一文を見つけたのでまずは紹介したい。

 
   
     

  「西側の日本研究」という2009年に出版された「西方日本研究叢書」(江蘇人民出版社)の序文をある中国の網民が転載したものだが、中国人の日本認識について次のように記している。

 「これほど複雑で微妙な中日関係、これほど強大なバランス感覚を必要とする困難な課題について、メディアの専門家のインタビュー、あるいはシンクタンクの報告や提言などには、往々にして失望させられる。だいたいが一衣帯水を宣伝するか、靖国神社を批判するかどちらかであり、いずれもマンガチックな見方だ。中国人の心理の中ではより広々とした理解の空間が必要であり、簡単な善悪2元論には警戒する必要があり、さもなければとてつもない災難をもたらす恐れがある」
 「遥か彼方にある米国と比べ、我々は眼前の強力な隣国に対して、その理解は全くバランスを欠いている。さらに、他の方面では教養のある学者や文化人も、いったん東の隣国日本の事になると、多くが通俗的な異国のイメージ、すなわち小日本を蔑視するか、あるいは大日本を畏怖するかどちらかだ」
 「さらに荒唐無稽なのは、彼らはこのように無思慮に日本人を嫌悪し、彼ら(日本人)の文化を全く理解しようとせず、そのくせ日本の商品を無条件で喜んでおり、その便利な道具の生産過程を見ようとしない。こうした例は多々ある」
 「国力の上昇と自信の増加に伴い、我々は全面的、かつバランスの取れた、合理的で柔軟な日本観を持つべきだし、またそれが可能なのだ。こうして、かつて激烈な生存競争の中で莫大な被害をもたらした強国が、曲折と落とし穴に満ちた発展の道で、どのような契機と選択、成功と失敗、苦痛と狂喜、利益と教訓を経たのか、落ち着いた気持ちになることで我々の知識の蓄えとできるのだ」

 筆者はこの一連の書き込みに「ぜひ日本の読者にも紹介したい」とコメントしたところ、原文を書き込んだ「@清華国学院」は自らのブログに全文を掲載してくれた。
http://blog.sina.com.cn/s/blog_5937d987010126oi.html

 「現在の状況でこの指摘をもう一度学ぶ必要がある」と微博にこの序文を紹介したのは徐百柯という人で、肩書きを見ると中国青年報「氷点週刊」の編集長を勤めている。徐はこのほど(9月5日)中国青年報に発表した文章で注目された。
 クリントン国務長官が訪中した4日、タカ派的言論で知られる「環球時報」が長官を「米中の相互不信を深める人物」と評論した。中国青年報は「メディアは『愛国』を商売にするな」との題で、環球時報を名指しこそしなかったが、狭隘な見方であり、販売を伸ばすために「愛国」を商売にしていると批判した。
 評論は「南太平洋は広々としており、米中共存を受け入れられる」との趣旨の発言をクリントン長官と習近平副主席が相次ぎしたことを紹介。その上で「クリントン長官の外交スタイルは我々と衝突することもあり、その言説に呆れることもあり、中国人は彼女を嫌うことも勝手だ。だが中米の指導者は『相互不信』になっているだろうか?そして(環球時報が)『覇権』『野心』などと口にすることは、相互不信を強化していないだろうか、拍手は片手ではできないのだ」と指摘した。
 さらに、このような激烈で勇ましい言説の背後には、古い思考と新しい市場があり、警戒すべきは自分の販売や視聴率のため、「愛国」を商売に使うことだと指摘した。「近年メディア市場での新たな動向として、まず荒々しい言葉で大衆の感情をあおり、市場を育成し、一段と荒々しい言葉を発してこうした感情に迎合し、市場で大いに売りまくるのだ」と批判した。
 その上で、「新聞、テレビなど公共の場で対抗、さらには戦争の感情を煽るのは、妄想的なマゾヒズムでなければ、商業民族主義を利用して愛国を消費するかのどちらかであり、前者は悲しむべき、後者は憎むべきだ」と結んでいる。
 中国青年報は胡錦濤国家主席の出身母体、共産主義青年団(共青団)の機関紙で、知人の中国問題専門家は「同紙がここまで書くのは、胡政権が米中関係や日中関係(特に尖閣諸島問題)で『愛国主義』を煽る左派(江沢民派?)の動きを苦々しく思っている有力な証拠ではないでしょうか」と指摘している。

 18回党大会を目前に、次期指導部となる政治局常務委員会入りをめぐる駆け引きがメディアを巻き込んだとの見方もできると思うが、筆者がツイッターなどで今回の文章の背景について尋ねたところ、ある著名な網民から次のような返事が返ってきた。
 「背景なんてない。80年代以来、中国青年報は改革志向があり、自由化の信奉者を輩出した。かつては李(大同)、盧(躍剛)であり、今は曹林がいる」
 李大同、盧躍剛は2006年に問題となった「氷点週刊」事件で編集部を追われた自由派の言論人だ。この事件についてはこれまでもさまざまな報道があるので、ここでは触れない。
 さて、この曹林という人物を検索すると、中国青年報の「青年話題版」の編集者、評論員とある。曹林も徐百柯も1978年生まれだが出身はそれぞれ江蘇省揚州、四川省成都と別だ。編集者の平均年齢が日本メディアよりも若い中国メディアで、重要な地位を占めているようだ。

 中国青年報が環球時報を批判したのは、これが初めてではない。本コラム(22)「適度腐敗」でも紹介した「制度と民主以外に反腐敗に解決策はない」との文章は曹林が書いたものだ。
 批判を受けた環球時報の胡錫進編集長は微博で次のように反論した。
 「環球時報が昨日社論でヒラリーは『中米の相互不信を強化する人だ』と批判したが、米国人は何とも思っていないのに、一部の中国のメディアはもう我慢できなくなったようで、愛国で『商売』したなどと考えている。これはレッテル貼りだ。環球時報が外国の指導者が来た時に批判するのは、中国の世論の開放で進歩があったことを示すものだ。だが米国の前で長く跪きすぎた人がいるようだ。私は彼らに反省するにしろ自己批判するにしろ、まず立ち上がってからにしろ、と言いたい」
 批判された側の曹林は胡錫進がかつて「自分の大半の人生で中国に対してコンプレックスを感じていた」と書いたことを引き合いに、「あなたは評論の何本を立って書いたのか?メディア人として、猿から直立歩行するようになった人間として、自分の直立した状態を覚えているのか?」と皮肉り「商売をやりすぎだ」などと書き込んだ。

 口汚い批判になっているのはどうかと思うが、この胡錫進に対しては、筆者が日頃注目するネット・オピニオンリーダーは批判的だ。
 以前本コラム「公共知識人」でも紹介した冉雲飛は「環球時報や北京日報は、ヒラリーを批判したことで得意になり、物を言うメディアなどと自負している。自分たちだけが外国の指導者を批判でき、これを言論の進歩などと考えている。最高指導者には何も言えない党が生んだイエローメディア(原文は「黄喉」)が、自分を凄いなどと考えているが、ご主人様が騒ぎ立てるのを許しているだけで、口を閉じなければならなくなったら、それこそ何も言えなくなるだろう」(原文はもっと下品な表現)と批判した。
 さらに、著名ブロガー、連岳も最近、環球時報について「環球時報は愛国主義を高々と掲げるよう呼びかけている。(だが)愛国主義を呼びかける者はだれもが流氓(ゴロツキ)であり、遠ざけた方がいい。さもなければお金を巻き上げられるか、命を取られるだろう」と述べ、さらに愛国主義について異例ともいえる大量の見解を微博に書き込んでいる。

 「愛国主義は政府が認めた高級マルチ商法で、ペテン師が始め、馬鹿がこれを受け入れる。馬鹿が犠牲となり、ペテン師が儲ける。あなたはペテン師か、馬鹿になるかどちらかだ」
 「日本政府は私人から釣魚島を購入した。多くの中国人が初めて政府が国民から土地を購入するということを聞いただろう。島の所有者は日本にいて幸せだろう、中国では強制的に取り上げられるか、愛国主義者らに殺されるかどちらかだ。あなたに私有財産があったら、日本のような政府と、中国のような政府とどっちを希望する?」 
 「人間がやっとのことでこの世の中に生まれたのは、愛国のためではない。人生の核心的価値とは、自らがより健康で、より多くの想像力、知識、お金、力を得ることであり、学ぶことを愛し、仕事、知識、生命を愛することだ。愛国主義のために命を捧げるのは人間性に反しており、遠ざけるべきだ」
 「愛国主義とは何か?あなたの発する声を愛し、他人にあなたの考えを発表することを禁じさせないことだ。あなたの家を愛し、他人にあなたの財産権を侵害させないことだ。そして最も重要なのは、あなたの自由を愛することだ。愛国主義と自由が衝突したら、迷うことなく自由を選ばなければならない。国民を愛さない国家など存在の価値がない」
 「戦前の日本は愛国主義が支配する国家だった。結果的に自ら台無しにしてしまい、隣国もひどい目にあった。戦後日本は国家再建の模範となり、勝者から学び、憲政、自由、民主(を進め)、市場経済が繁栄し、科学技術や教育も先進的で、民衆は教養と礼儀を知り、対外援助も積極的だ。このような隣人を持って、中国人は喜ぶべきであり、現在の日本から学び、戦前の日本から学んではいけない」
 「ある一つの国は、法治、自由、民主があり、犯罪率が低く、人権が保証され、民衆の生活は幸福で、パスポートが世界で通用する。もう一つの国は、統治者は法律を超越し、執政者が率先して憲法に違反し、人々の家を強制的に立ち退かせ、永遠に一党独裁のままで、パスポートを持っていてもほとんど世界を自由に旅することができない。この2つの国家をあなたはどちらを愛する?どちらが人類に有益か?」(言うまでもなく日本と中国のことである)
 「中国の愛国主義者が声高に主張するのは、あなたはこの国で生まれたのだから、この国を愛さねばならぬということだ。これは覇王条款(経営者が一方的に決め、消費者の権利を侵害、制限する不平等な条項)であり、無効だ。あなたが豚小屋で生まれたからといって、豚小屋を愛する必要はない。あなたが豚でない限り」

 さぞや愛国憤青からも怒りを買っているのではと思うが、07年、当局からの圧力を受けながらも、地元厦門市で化学工場の建設に反対する“散歩”デモを市民に呼びかけたことで名を上げた連岳の知性と勇気を感じる。
 これ以外の発言も収録したブログがあるが、読者の反応は彼を罵るものもあるが、支持する声の方が多い。
http://blog.sina.com.cn/s/blog_46f6137501016y7s.html#bsh-75-134160499

 問題はこのような「環球」が唱導する狭隘な「愛国主義」に反対する理性的な声が中国の世論空間でどの程度広がっているのかだ。次々とネットに投稿される日本商店叩き壊しの映像などを見て、こうした声が中国の末端社会にどこまで届いているのか、直接中国の知識人らに尋ねたい。

 今回の反日デモがどのような形で発展するのか、予断を許さない。やはり、国家間の問題で、民衆を扇動して暴動を起こし、日本企業を脅迫する形で自分の要求を認めさせようとするのは到底受け入れられるものではない。ただいずれにせよ、こういう理性的な声が広がっていることを日本社会も知るべきだし、彼らのようなネットを中心に発言する知識層との対話、交流を続けていくことは両国関係を平和的、安定的に維持するための保険だと考える。

 

今回のことば

環球時報:中国共産党の機関紙『人民日報』傘下の新聞のタブロイド紙。しばしば対外強硬的な論調の社説・記事が掲載されることで知られる。

中国青年報:中国共産主義青年団中央委員会が発行する日刊紙。読者は党員の子弟をはじめ高学歴の若者が多く、比較的穏健な記事が多いとされる。かつて歴史認識をめぐる記事で一時停刊処分を受けた『氷点週刊』を副刊として発行する。

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「メディアは『愛国』を商売にするな」との題で、
暗に『環球時報』を批判(2012年9月5日付)

覇王条款:経営者が一方的に決め、消費者の権利を侵害、制限する不平等な条項。『現代漢語詞典 第6版』(2012年7月刊)で採用された新語。

 

 

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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