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東京便り―中国図書情報 第47回 .

 2017年中国の出版トレンド
  市場リードするオンライン書店と電子書籍

   
   

激しい覇権争いの続く、中国オンライン書店2018年の「春節」(旧正月、今年は2月16日)を前に、中国の出版関係においても昨年1年間のさまざまな統計データが発表されている。

小欄「東京便り」では前回、中国の大手オンライン通販「亜馬遜中国」(アマゾン中国)の「2017年ベストセラーランキング」についてレポートしたが、今回は、その続編ともいえる2017年の中国の出版トレンドについてご紹介したい――。
 
 

   
 

■図書小売規模803億元、オンライン書店が躍進

中国における図書小売業の市場規模は、2017年に803億2000万元(1元は約17円、約1兆3700億円)で、前年(2016年)の701億2000万元に比べ14.55%増と、ここ数年の堅調な成長ペースを維持した形となった。
このほど北京で開かれた「第31回北京ブックフェア」で発表された「2017年中国図書小売市場レポート」で明らかにされたもの。

市場規模拡大の推進力となったのが、主にオンライン書店の躍進で、前年比25.82%増。
一方、オンライン書店が発展をとげる陰で、淘汰の進んだ「実体(リアル)書店」も、それまでのマイナス成長から前年比2.33%増とプラス成長に転じた。これは全国民向けの読書活動「全民閲読」や「実体書店免税政策」など、リアル書店の救済策を推し進める、中国政府のてこ入れがあったからだと見られている。

※ 関連記事「東京便り―中国図書情報 第45回」【変わる!?中国の書店事情――「多機能型書斎」に「シェア書店」などが登場】

ジャンル別では「児童書」が市場の牽引力となっていて、それは2017年図書小売市場における売上高(定価総額)の24.64%と、全体の約4分の1を占めていたことがわかった。そこからは中国の過酷な競争社会の“前哨戦”ともいうべき子どもの教育に、力を入れる親世代の姿が浮き彫りになるかのようだ。
 

■「当当網」トレンドは小説と児童書、取引規模は400億元

中国オンライン書店10強(クリックで拡大表示)一方、中国の大手ECサイト(オンライン通販)「当当網」(dangdang.com)はこのほど、同サイト内のオンライン書店における2017年ユーザーレポートを発表。それによると、2017年の図書取引規模(定価総額)は約400億元、総売上部数は11億8900部(紙書籍・電子書籍の合計)に上った。なかでも「小説と児童書の売り上げが着実に伸びた」ことが明らかとなった(中華網など)。

「当当網」オンライン書店のアクティブユーザーは4000万人以上とされる。それは中国では「京東商城」(JD.com)、「亜馬遜中国」(アマゾン中国、amazon.cn)などの大手ECサイトと競い合う規模となっている(右図=オンライン書店10強、2017年)。

ここで「当当網」オンライン書店が発表した2017年ベストセラーランキングを見てみよう。

「2017年当当網ベストセラーTOP10」

『人間失格』

『解憂雑貨店』

『追風筝的人』

『天才在左 瘋子在右』

『這就是二十四節気』

『島上書店』

『摆渡人』

『我不』

『白夜行』
1、『人間失格』
(世界文学名著シリーズ)
  (日)太宰治 著/楊偉 訳、作家出版社(2015年8月)
  ――太宰治の自伝であり、遺書でもある作品。代表作の一つ。中国では近年、作家出版社のほか華東理工大学出版社、新世界出版社など各社から次々と翻訳出版されている人気書。この作品を原作・原案とした日本のコミック、映画、ドラマの流入で、改めて原書が注目を集めていると見られる。

『解憂雑貨店』 (原題:ナミヤ雑貨店の奇蹟)
  (日)東野圭吾 著/李盈春 訳、南海出版公司(2014年5月)

『追風筝的人』 (カイト・ランナー)
  (米)カーレド・ホッセイニ 著/李継宏 訳、上海人民出版社(2006年5月)

4、『天才在左 瘋子在右』(完全版) (天才は左に 狂人は右に)
  高銘 著、北京聯合出版公司(2016年1月)
  ――初版は2010年、武漢大学出版社から刊行された。以来ロングセラーに。本書は未公開部分を加えた完全版として、再版された。
中国で初めて編まれた“心の病”を抱える人たち(精神疾患患者など)へのインタビュー集。本書をモチーフとして、香港で製作された同名ネットドラマが2015年に配信されたことでも話題を集めた。

5、『這就是二十四節気』(全4冊) (これが二十四節気)
  高春香、邵敏 文、海豚出版社(2015年7月)
  ――季節の移り変わりを示す「二十四節気」を、美しい絵画とともに子どもたちに教える中国初の「二十四節気」絵本。
「立春、雨水、啓蟄、春分、清明……」といった各節気の天文、気象、動植物、民俗風習などを、農村の暮らしとともにやさしく伝える。

『島上書店』 (日本語題:書店主フィクリーのものがたり)
  (米)ガブリエル・ゼヴィン 著/孫仲旭ほか 訳、江蘇鳳凰文芸出版社(2015年5月)

7、『神奇校車 図画書版』(全11冊) (マジック・スクールバス 絵本版)
(米)ジョアンナ・コール 著/(米)ブルース・ディーギン 絵、貴州人民出版社(2011年1月)
  ――フリズル先生が不思議なスクールバスに子どもたちを乗せて、海底や太陽系など様々なところへ連れて行く、小学生向けの科学絵本。アメリカ発・世界規模のロングセラー。
日本では『フリズル先生のマジック・スクールバス』として岩波書店から1995年に出版、以来シリーズ化された。

『摆渡人』 (原題:Ferryman、渡し守)
  (英)クレア・マクフォール 著/付強 訳、百花洲文芸出版社(2015年6月)

9、『我不』
  大氷 著、湖南文芸出版社(2017年9月)
  ――人気キャスターにして民謡歌手、そしてベストセラー作家である大氷(大冰)の最新叙述。国内各地はもとより、世界の果ての南極・北極地方を旅した作家が、出合ったこと・もの、人々との温かなふれあいを描く。タイトルの「我不」は、「我命由我不由天」(自分の運命を運命としてあきらめない)ことからきている。

10『白夜行』
  (日)東野圭吾 著/劉姿君 訳、南海出版公司(2017年7月 第3版)


以上、前回の小欄でご紹介した「アマゾン中国『2017年ベストセラーランキング』」と比較していただくとわかるのだが、やはりここでも東野圭吾の人気は圧倒的で、トップ10に2作品がランクインしている。
太宰治の『人間失格』は「古典的名作が今、どうして?」と意外に思えるが、これを原作・原案とした日本のコミック、映画、ドラマの影響が大きいようだ。

※ 関連記事「東京便り―中国図書情報 第46回」【アマゾン中国「2017年ベストセラーランキング」が発表 東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が不動の第1位に!】
 
こうしたベストセラーの結果に対し、中国メディアは「(トップ10には)輸入書の翻訳版が多く、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『カイト・ランナー』『渡し守』はいずれも前年(2016年)に続いてランクインしたものだ。これらが息の長い人気作品であるだけでなく、2017年は中国の新刊に競争力が足りなかったことを示している」(中華網)と論評している。

世界的人気書『百年の孤独』『窓ぎわのトットちゃん』などは中国でもロングセラーとなっているが、こうした数年がかりのロングセラーが日本以上に多いのは、国土が広く、人口が多く、書籍文化の浸透には時間がかかる中国ならではの土壌によるところが大きいのかもしれない。
  

■「90後」は電子書籍を、「70後」は紙書籍を愛読

当当網オンライン書店の「2017年ユーザーレポート」では、ユーザーの傾向についても分析している。
それによると、男女比では女性が51.2%、男性が48.8%で女性のほうが若干多い。
学歴から見ると「大学生」か「大卒」以上が半数を超えており、「中国ネットユーザーの平均レベルを上回っている」(学歴が比較的高い)。
職業別では「会社員」が中心で、生活レベルは「中・上流層」に属している人が多いという。

読書傾向としては年代別でハッキリ分かれ、「90後」(1990年代生まれ)の若者たちは、一般書籍(紙書籍)より電子書籍を愛読している。「80後」(80年代生まれ)の青年・中年世代は音声読書(朗読)サービスの「聴書アプリ」の使用頻度が多い。さらに「70後」(70年代生まれ)の中年世代は、やはりライフスタイルとして慣れている紙書籍での読書を好む傾向があるという。

本の購入時に、ユーザーが重視することについては、「正規版、質の良さ」がトップ。次いで「ネット上の口コミ」だった。ネットでの口コミに最も影響されるのは「90後」の若者たちで、「友だちの推薦よりも、ネットでの評判を信じる」という。逆にネット上の口コミに影響されず、最も自分の考えを大事にするのが「70後」の中年世代だった。

好きなジャンルは、全体としては小説が多いものの年代別で異なっている。「90後」は青春文学や文化・芸術、ビジネス・資格取得関係など。「80後」「70後」はこの世代から歴史関係が増え始める。また「80後」「70後」の女性は子育て中のママが多く、そのため子ども向けの教育書や児童書を選ぶ人が多数いた。

このほか、2016年には本の売上高(定価総額)において、オンライン書店がリアル書店を抜き去ったとされる中国。
当当網でもその流れは加速している。同サイトの電子書籍関連サービス「当当雲閲読」(e.dangdang.com)における電子書籍の売り上げは、2017年に「前年比126%増、新規有料ユーザー72%増、電子書籍のダウンロード部数は前年比51%増」となり、電子書籍が着実に普及していることがわかった。

「90後」「00後」(2000年代生まれ)の若い世代が、最新トレンドを牽引する中国――。
当当網「2017年ユーザーレポート」からは、スマホの読書アプリを駆使して、世界のトレンドに気軽に接する、または貪欲に吸収しようとする、“進取の気性に富んだ”若者像が見えてくるかのようだ。
近い将来、若者たちが社会の主役になるにつれ、中国人の読書スタイルも大きく変わっていくことだろう
  

 
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、
『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

 

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