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東京便り―中国図書情報 第32回 .

 

〈中国の出版事情はいま〉出版社の改名ラッシュに
人気の外国小説など ――中国図書出版ニュース
     

 

 

 

 

 

 中国国内の出版社にここ数年、“改名ラッシュ”の波が押し寄せている!?
 また、2016年上半期のベストセラーランキング(文芸部門)で、上位を占めたのが日本や外国の小説の翻訳版だった――。

 今回の東京便りは、そんな「中国の出版事情のいま」を知る、最新ニュースを2本まとめてお届けしたい。

 

     
     
     



>>時代新媒体出版社

 


>>中国財富出版社

 


>>故宮出版社

 


>>大象出版社

 

 

 

■ 中国の出版社に改名ラッシュの波!?

 中国国内の出版社にここ数年、“改名ラッシュ”の波が押し寄せている。
 例えば、「印刷工業出版社」は「文化発展出版社」に、「新疆美術撮影出版社」は「新疆文化出版社」に、「中国審計出版社」は「中国時代経済出版社」に、「中国物資出版社」は「中国財富出版社」に、「紫禁城出版社」は「故宮出版社」にそれぞれ社名を変更したという。

 さらに多くの地方で、地方政府の認可により設立された出版集団(グループ)でも改名が進んでいる。
例えば各地の出版集団のうち、福建省の出版集団は「海峡出版発行集団」に、湖北省のそれは「長江出版伝媒集団」に、さらに河南省では「中原出版集団」に、遼寧省では「北方出版集団」に、といった具合だ。
北京の地元紙「北京青年報」によれば、「全国に500~600社ある(正規)出版社のうち、これまでに100社以上が社名変更をした」という。
それにしてもなぜ中国で、こうしたムーブメントが起きているのか?

 中国メディアによれば、1つには、2004年から急速に進められた出版体制改革が背景にある。この改革により、中国の官営出版社の機構改革が進められ、現在では「人民出版社」「中国盲文出版社」などいくつかの出版社を公益型の「事業単位」として残したほかは、すべて経営型の「企業単位」に転換された。
ちなみに「事業単位」(Public Institutions)とは、社会公益を目的として国家機関、またはそれに準ずる機関が設けたいわば非営利組織のこと(ここでは官営出版社を指す。「国有事業単位」とも)。
一方の「企業単位」とは、一般的に独立採算制をとる経済組織のことだが、ここでは“政治”と“経済”の機能を分けた国有企業(出版社)のことを指している。

 日本の出版社とは経営システムが異なるため、いささかわかりづらいかもしれない。
いずれにせよ中国の出版社は現在、公益型の「事業単位」と経営型の「企業単位」に分かれているが、そのほとんどが経営型「企業単位」であり国有企業だ。

 もっとも各社の報道・宣伝方針に関わる政策立案などについては、これまで同様、国務院(政府)の直属機構で、中国メディアを監督する国家新聞出版広電総局が担っている。出版社のほとんどが企業に転換されたとはいえ、“国有”であるだけに、発信を監督するのは政府であるという図式は変わらないようだ。
(このほか、出版権と図書コード(ISBN)のない編集プロダクションにあたる民間資本の「民営出版公司」も多数ある。この公司は、前述の「500~600社ある出版社」には含まれない)

 こうして近年の出版体制改革により、出版社の“企業化”が進み、それにつれて新たなイメージアップを図るために社名変更をした出版社が増えたのだという。

 背景の2つには、専門性の強い“お堅い”社名から、より人々に受け入れられるソフトな社名に変更していこうとする流れがあった。「印刷工業出版社」が「文化発展出版社」に改名したのは、顕著な例だ。
同社の趙鵬飛社長は社名変更について「じつは、わが社の管轄(上部)機関が『中国印刷集団公司』から『中国文化発展集団公司』に改名したことにより、(自動的に)社名を変更したのです。しかし、それによりかえって業務範囲が広がり、ブランドイメージも向上しました。『印刷工業出版社』では不安を覚えたという他ジャンルの作家とも、新しいコラボレーションが生まれています」と胸を張る。

 背景の3つには、今まさに「急速な転換期」に直面している出版業が、“生き残り”をかけて講じた策としての意味合いがあった。
業界関係者によれば、中国の出版業は今、「電子書籍、資本の運用、“走出去”(海外進出)政策」などの試練に挑戦している。とりわけコンテンツのデジタル化、オンライン化の推進は、一部出版社にとって喫緊の課題だという。

 より優れたコンテンツの制作に重きを置きつつ、いかにそれを最新ITと融合させるか。
長江出版伝媒集団の関係者は、中国トップクラスの電子コンテンツ配信会社「中文在線」が2015年、国内市場に株式を上場した成功例を引きながら、「デジタル化の子会社を設立し、通信会社や運営会社とも連携して、オリジナルの電子コンテンツ配信を進めていきたい」と意気込みを語っている。

 旧来型システムの転換期に直面する中国の出版社――。それを乗り越えようとする“改名ラッシュ”はまだまだ続きそうだ。

 

  ◆中国の出版社 改名リスト(一部)
旧社名 現社名
印刷工業出版社 文化発展出版社
新疆美術撮影出版社 新疆文化出版社
安徽電子音像出版社 時代新媒体出版社有限責任公司
中国審計出版社 中国時代経済出版社
中国物資出版社 中国財富出版社
紫禁城出版社 故宮出版社
江蘇古籍出版社 江蘇鳳凰出版社
河南教育出版社 大象出版社
天津少年児童美術出版社 新蕾出版社
     

■ 「中国の出版事情はいま」

 中国・北京でこのほど、国内最大級の国際ブックフェア「2016 第23回北京国際図書博覧会(BIBF)」(8月24~28日)が開催された。
 ここでは、会期中明らかにされた最新の中国出版事情について、ポイントとなるデータをいくつかピックアップしてみたい。

★2015年、中国出版業の総売上高は前年比8.5%増に
2015年、中国の出版・印刷・発行業における総売上高は、2兆1655億9000万元(1元は約15円)で、前年比8.5%増だった。

 2015年、中国の図書(書籍)発行部数は、計86億6000万部で、前年比5.8%増だった。
図書出版における売上高は、822億6000万元で、前年比4.0%増。利益総額は125億3000万元で、前年比7.0%増だった。

★2015年、出版図書は47万6000点、前年比増も「量から質へ」
2015年、中国全国で出版された図書は計47万6000点で、前年比6.1%増。
そのうち、再版点数は約21万5000点(同11.9%増)、新刊点数は約26万点(同1.8%増)。
図書の再版と新刊の比率は、2014年の1対1.3から、2015年は1対1.2となった。
中国のメディアを監督する国家新聞出版広電総局によれば、これは中国出版業が出版そのものの目標を「量から質へ」転換していることの表れだという。

 ※ ちなみに2014年の統計だが、日本の書籍の新刊点数は7万6465点、その発行部数は10億8398万冊だったという(「出版業界ニュースフラッシュ」2015年1月第5週より)。
  統計年が異なるが、新刊点数だけで比べると、中国は1年あたり日本のざっと3倍余りの新刊を出していることになる。

 このほか、2015年の中国デジタル出版産業の売上高は、過去最高となる4403億9000万元で、前年比30%増だったという。

★2016年上半期、外国作品が売り上げ伸ばす
BIBFではまた、2016年上半期の全国ベストセラーランキングが発表され、文芸部門では外国人作家の作品がズラリ上位を占めるという驚愕の結果となった。
トップ5までは、順に――

1、『追風筝的人』(日本語題:カイト・ランナー)
(米)カーレド・ホッセイニ著、李継宏・訳 上海人民出版社(2006年5月 第1版)

2、『解憂雑貨店』(原題:ナミヤ雑貨店の奇蹟)
(日)東野圭吾・著、李盈春・訳、南海出版公司(2014年5月 第1版)

3、『三体』
劉慈欣・著、重慶出版社(第1部:2008年1月 第1版)
※ 2015年第73回ヒューゴー賞を受賞した中国SF小説

4、『龍族』
江南・著、長江出版社(第1部:2010年4月 第1版)
※ 中国でロングセラーの長編冒険ファンタジー

5、『白夜行』
(日)東野圭吾・著、劉姿君・訳、南海出版公司(2008年12月 第1版)

という結果であり、うち2作が日本の推理作家、東野圭吾の作品だった。
このほか、文芸部門のベストセラーとして挙がったのが、東野圭吾の『嫌疑人X的献身』(原題:容疑者Xの献身)、南米コロンビアのノーベル賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年孤独』(日本語題:百年の孤独)、英作家クレア・マクフォールの『摆渡人』(渡し守)、米作家ガブリエル・ゼヴィンの『島上書店』(日本語題:書店主フィクリーのものがたり)、仏作家マルク・レヴィの『偸影子的人』(影を盗む人)、そして中国の作家、路遥の『平凡的世界』(平凡な世界)全3巻など。
文芸ベストセラー上位のほとんどが外国人作家の作品で占められるという、驚きのラインナップとなった。

 上半期のランキングについて、中国のある出版関係者は「いまや国内の購読者の主力は“90後”(1990年代生まれ)、つまり今年17~26歳の若い世代に移行している。この文芸ランキングからは、中国の若者たちに日本のベストセラー作家の作品や、SF小説、ミステリー小説が人気であることが見て取れる。読者の興味は目まぐるしく変わっているが、いずれにせよ2016年上半期は、現代中国文学よりも外国文学のほうがブームであったことは間違いない」と分析している(新華網、北京日報、北京晩報)。

中国語圏の流行語に、主に日本発のサブカルチャーであるアニメ、コミック、ゲームを総称した「ACG」という言葉があるが、最近ではそこにノベル(小説)が加わり「ACGN」と呼ばれている。
流行語として広まるほど人気を集める日本の文学……。中国のトレンドを占うベストセラーランキングが今後どう変化していくか、興味は尽きない。

 

 

 

 

     
   

 

 

     
 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、 『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

Blog:「北京メディアウオッチ@東京」 

     

 

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