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2004年7月  “一人っ子”にイエローカード!?

     

さきごろ、日本で公表された出生率「1.29」は、衝撃的なニュースでした。一人の女性が一生のうちに産む子どもの平均数を示した「合計特殊出生率」のことですが、過去最低だった平成14年の1.32をさらに下回るという最悪の結果となってしまったのです。独身女性の一人としては、そうした“社会悪”に加担しているという後ろめたい気持ちがないわけではありませんが……。折から、強行採決して成立した年金制度改革法とも重なって、日本の“少子化”問題が、先の参院選の焦点となったのは記憶に新しいところです。

「日本は、だれからも頼まれないのに“一人っ子政策”を地でいっているんだなぁ~」。そんな薄ぼんやりとした感想を抱いていた矢先のこと。本家本元である中国の一人っ子政策(“独生子女”政策)に、庶民の側から警鐘を鳴らした本が出版されました。『只有1个孩子――中国独生子女意外傷害悲情報告』(一人の子だけ――中国の一人っ子 突発傷害の悲しみのレポート、楊暁升著、華芸出版社)です。

 
     

今年初め、地元の人気紙『北京青年報』に連載されて反響を呼び、この6月に出版化されました。辣腕の記者で自身も一人娘の父親である著者が、不慮の事故で一人息子や娘を亡くした父母らにインタビューして、一人っ子政策が抱えるさまざまな問題を明らかにした渾身のレポートです。
「一人っ子の突然死に関するインタビュー実録は、中国でも初めて」(『北京青年報』)とされ、一人っ子政策に、民間人が“イエローカード”を突きつけた話題作となっています。世界でも稀にみる少子化システム・中国の一人っ子政策が1970年代末に施行されて、はや25年――。国の重大政策を受け入れながらも、不幸にしてそのハザマに陥ってしまった人々の悲痛な叫びが、本書からは聞こえてくるようです。日本人としても、とても人ごととは思えない(!?)少子化問題の現状とゆくえとは――。

本書『只有1个孩子』で、著者は突発的な事故や事件で亡くなった青少年6人のそれぞれのケースを追っています。事故のようすや生前の子どもたちの歩みについて、また残された人々の思いについて、綿密な取材を重ねています。

張曄(ジャン・イエ)さんは17歳。大学進学を夢みる女子高生でした。しかし、1999年のある冬の日の朝、通学途中の彼女の自転車が、スピードを上げてカーブしてきたマイクロバスに跳ね飛ばされてしまったのです! 辺りは一瞬にして血の海と化しました。原因は、夜勤明けのドライバーのいねむり運転。目撃者たちがすぐさま110番通報し、ドライバーは自ら少女を近くの病院へと運びこみました。しかしその9日後、医師たちの努力もむなしく張曄さんは帰らぬ人となったのです……。
著者が少女の両親に会ったのは、それから3年後のことでした。北京電器部品工場に勤めていた両親は、愛する一人娘を突然亡くして「悪夢にうなされ、涙で顔を洗う毎日。今でも信じられない」とむせび泣きます。――市の南郊にあるアパートをそのまま残して中心部に引っ越したのだが、夫婦でたびたび戻っては、子ども部屋に置かれたままのベッドや机のほこりを払い、亡き娘の影を追っている。もう若くはないので、2人目をもうけるのは無理だろう。東北地方から出稼ぎにきていたウェイトレスの少女を「娘にそっくりだったから」という理由で養女にしようとしたのだが、いっしょに暮らしてみると何かと違いが目について、うまくいかなくなった。もはや精神状態はボロボロになってしまった――と。
現在、レイオフされた父親と早期退職した母親は、アルバイトを続けながら細々と暮らしています。裁判で加害者のドライバーに支払いが命じられた損害賠償金もまだ受けとっていないばかりか、その男の行方もわからなくなってしまいました。
「彼だって身分証明証があるでしょう。公安、検察、裁判官はいったい何をしているのか?」「やがて私たちが寝たきりになったとしたら、だれが下(しも)の世話までしてくれるのでしょう? それを考えると夜も眠れないのです」

本書にはこのほか、ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒で亡くなった26歳の郭纓(グオ・イン)さん、流星雨のふる夜に、暴漢に襲われて殺害された14歳の馬旻(マー・ミン)さん、交通事故で亡くなった16歳の林為忠(リン・ウェイジョン)君らのケース、そして、遺族の無念の思いがレポートされています。「唯一無二」の子どもを亡くした人々が、将来の希望をなくしてガラガラと崩れ落ちていく姿は、読むものの心を強く揺さぶります。そして中国の一人っ子政策の“盲点”について、改めて考えさせられるのです。

人一倍の子ども好きだという著者の楊暁升(ヤン・シャオシェン)氏は、2年の歳月をかけて本書をまとめた理由について、こう語ります。
「他人の不幸や悲しみを取り上げるのは人道的とはいえないし、とても辛いことだった。それに私は、他人のプライバシーをのぞいて喜ぶような性格ではない(中略)。一人娘をもつ父親として不幸に遭った家族を取材し、たいへん心を痛めているし、同情している」「ここにレポートしたことは、かけがえのない我が子を亡くした家族はもちろん、一人っ子を育てる家族、ひいては中国の未来に関わることなのだ」

ところで、本書にも詳しく紹介されている一人っ子政策ですが、これは中国が爆発的な人口増加を抑えるために実施している「一組の夫婦がもうけられる子どもは(例外をのぞいて)一人だけ」という政策です。
もともと「多子多福」(子どもが多いと幸せも多い)、「人多好办事」(人が多いと仕事もやりやすい)という考え方のある中国では、1957年に経済学者の馬寅初が「新人口論」を発表し、急速な人口増に「待った」をかけようとしましたが、多産をよしとする毛沢東によって阻止されました。以来“大躍進”をへて人口は億単位で増え、64年の7億人が、15年後(79年)には10億人に達するまでになりました。そして改革・開放がはじまり、79年に馬寅初が名誉回復して、この政策がいよいよスタートしたのです。

本書によれば、中国は一人っ子政策によって人口増を抑制し、こんにちの繁栄を築いたのだといいます。それは「82年~2001年の20年間に3億人近くの出生を抑え、出生率も82年の2.228から、01年の1.338まで減少した」。つまり、出生率はすでに先進国レベル(1.5前後)を下回っています。また、一人っ子を奨励し、多くても第2子までに抑えることで、現在約13億の人口は「15億を超えたあたりから、増加がとどまる」とも期待されているのです。

しかし、コインに裏表があるとおり、物事がプラス面だけであるはずがありません。この独特な政策が、社会に及ぼした影響もじつにさまざまです。
子ども1人が2人の親と4人の祖父母の世話をしなければならない、という深刻な「高齢化問題」(現在60歳以上の人口は、全体の約10%で先進国なみ)、過保護を受けて「わがままに育つ子どもの増加」、農村に根強い“男子偏重”の考え方から生まれた「男女別人口のアンバランス」(安定数が女100:男105人前後のところ、中国は100:115)、農村で労働力を確保するために、第2子からを戸籍に入れない「闇っ子の増加」、それにともなう「教育レベルの格差拡大」(農村で高等教育を受ける子どもの割合が低い)などなど……。

そして、本書がとりあげる不慮の事故も大きな問題となりつつあります。中国には8000万~1億の一人っ子の家庭がありますが、食中毒や溺水、交通事故、自殺などの不慮の事故(事件)で亡くなった子ども、それに何らかの障害が残り、労働力として数えられない子どもを合わせると、一人っ子家庭の0.8%にあたる64万~80万軒が被害者となっている。それは「先進国の3~10倍にあたる」(本書)という高い数値なのです。
子だくさんが幸せとされた中国で、子どもが一人しかいない両親の不安とプレッシャーも相当なものでしょう。中国の友人で、女子中学生の父親であるAさんも、「娘が出かければ、ぶじに帰宅するまでは気が気じゃありませんよ。身も細る思いです……」と会うたびにこぼしています。

一人っ子を突発事故で失うなどした家族への救済が求められる中、2002年9月1日には、中国で初めて人口と計画出産について法制化した『人口与計画生育法』(※注)が施行され、被害者救済についての条項が盛り込まれました。
――第27条 一人っ子が突発的な傷害に遭い、体が不自由になるか、または死亡し、その両親が第2子を作らず、養子をとらない場合、地方人民政府は(当該家族に)必要な援助をしなければならない。

『只有1个孩子』の著者・楊暁升氏は、こうした動きを「政府が一人っ子を失うなどした被害家族に、関心を払いはじめた証し」と評価しながらも、「条文はじつにあいまいで、大まかなもの。被害家族のほんとうの助けにはならない」と、なおも厳しい視線を向けています。
「国と政府は、こうした家族が受けた損害、とりわけ第2子を作らず、養子をとらない父母の老後に対して、全責任を負うべきではないか? なぜなら彼らは国の政策によって一人っ子しか作れなかった。いわば犠牲を強いられた人々なのだから」
「一人っ子政策の重要性は疑いないが、ならば政府は、社会主義の優位性を発揮して、社会保障制度や老人福祉事業を充実させる必要がある。(中略)中国の重要思想である“三つの代表”には『広範な人民の根本利益を代表する』とある。また、温家宝総理は『責任ある政府とは、つねに人民の利益を最優先とするものだ』となんども強調している。中国の公民一人ひとりが豊かで、幸せな日々を送るためにも、政府のさらなる人道的な配慮が求められている」

じっさい、現行の一人っ子政策は「夫婦がともに一人っ子なら、第2子が求められる」(『人口与計画生育法』規定条件)とされているほか、罰金(社会撫養費)を払って第2子をもうける都会の“二胎族”、子どもを作らない丁克族(ディンクス)の出現など、その産児制限にも事実上さまざまな自由選択が生まれています。
一人っ子政策はこうして試行錯誤を経ながらも、人々の理想により近づくものとなるのでしょうか? 施行から四半世紀の現在、それはある意味で中国の未来を占うターニングポイントを迎えているのかもしれません(かたや日本の少子化問題も気になるところですが……)。

(※注)『人口与計画生育法』(人口と計画出産法)。2002年9月1日、それまでの人口・計画出産制度を初めて法制化したもの。全47条からなる詳しい規定が打ち出されている。
一人っ子を奨励し、これを生涯守る夫婦には、国家が「独生子女父母光栄証」(一人っ子父母栄誉証)を発給。国と省・自治区・直轄市の規定にしたがい、関係単位(機関、職場)が、教育や医療などの面で優遇する。
また、「法律・法規の規定条件を満たせば、第2子の出産が求められる」(第18条)という条文も明記された。規定条件は各省、自治区、直轄市の人民代表大会またはその常務委員会が定めるところによって異なるが、具体的には、①夫婦がいずれも一人っ子である場合、②農村の夫婦で一人目が女児である場合、などとなっている。

 
   
   
     
     
bestsellere  

総合
★王府井書店(新華書店)(北京市東城区王府井大街218号)
2004年7月の週刊ベストセラー

     










 

『告訴孩子,你真棒!』(あなたはできると子に告げよう)
盧勤 著 長江文芸出版社 2004年4月初版


「あなたはすごい!――それは、心の資源を開く金のカギ」「大胆に誉めたたえよう。ほかの子と比較しないで」。中国家庭教育学会常務理事で、子どもの教育に関する作品を多数著してきた盧勤さんが、最新の教育方法について解き明かす。一人っ子を溺愛する親たちが増えているが、子どもを正しく誉めて叱り、励まし、守ることの大切さを説いている。


『狼図騰』(オオカミのトーテム)
姜戎 著 長江文芸出版社 2004年4月初版


『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』、ダ・ヴィンチコード)
ダン・ブラウン著(米) 朱振武/呉晟/周元暁 訳 上海人民出版社 2004年3月第4刷


『首席専家趙霖談 平衡膳食健康忠告』(首席専門家・趙霖が語る バランス食で健康を忠告する)
趙霖 著 人民衛生出版社 2004年7月第6刷


中国衛生部などの主催で、2003年1月からスタートした「相約健康社区行」は、医師や保健士などの専門家が各地で「健康講座」を開くというもの。本書はその講座の精華をまとめたシリーズの一冊で、栄養学の専門家である著者が「バランスのとれた食事の重要性」を分析している。
「主食と副食のバランス」「食物の寒性、熱性、温性、涼性のバランス」「甘、酸、苦、辛、咸の5つの味のバランス」「食事時間のバランス」など、伝統的な “薬食同源”(医食同源)や中庸の思想に、新しい科学的根拠を加えて、健康食の大切さを唱えている。


『没有任何借口』(原題『No Excuse!』 いかなる言い訳もしない)
フェラー・ケープ著(米) 金雨 編訳 機械工業出版社 2004年7月第18刷


“No Excuse”(言い訳をしない)は、「アメリカ陸軍士官学校200年来の最も重要な行動規範」であり、「多くの有名企業が掲げる理念と価値観」であるという。それは、責任感や勤勉な精神、誠実な態度、完璧な実行能力を現している。我々が求めているのは、まさにこのような精神の持ち主である、と本書。
中国では、いろいろな場面で「それは私の責任ではない」という言葉が返ってくるような気がするが、そのためなのか?本書は「企業管理者やスタッフのテキストにしたい」と大きな反響を呼んでいる。


『人生哲理枕辺書』(人生哲理、枕辺の書)
柯鈞 編著 九州出版社 2004年4月初版


「あなたが知るべき165の人生哲理」とサブタイトルにある。「自分を本当に信じたとき、他人からも信じてもらえる」「人に救いの手を差し伸べると、それは往々にして互いの利益になる」「一切の成功は、自分の努力でつかむこと。チャンスを把握し、創造すること」など国内外に伝わるエピソードを交えながら、165の人生哲学をつむぎ出している。
「枕元に置いて時間があるとき、悩んでいるときなどに、この本を開きましょう。それはあなたを導き、励まし、癒すに違いありません」とキャッチコピーにうたっている。


『把信送給加西亜』(原題『A Message to Garcia』 邦題『ガルシアへの手紙』)
エルバート・ハバード著(米) 路軍 訳 企業管理出版社 2004年2月第4刷


有史以来の世界的ベストセラー『聖書』や『毛沢東語録』などに続く第6位の本書は、古典的な人生の指南書だ。2年ほど前に、これと同じ作品が『致加西亜的信』というタイトルでハルビン出版社から出されて、ベストセラーに。
「困難に立ち向かい、勇気をもって課題に挑むこと」「自信を持つこと」「自分を信じること」の大切さを説いている。


『夢里花落知多少』(NEVER-FLOWERS IN NEVER-DREAM)
郭敬明 著 春風文芸出版社 2003年11月初版


『細節決定成敗』(ディテールが成敗を決める)
汪中求 著 新華出版社 2004年4月第3刷


『亦恕与珂雪』(亦恕と珂雪)
蔡智恒 著 新世界出版社 2004年5月初版


新感覚のネット小説で、若い世代の支持を集める台湾の作家・蔡智恒の最新作だ。小説を手がけようとするエンジニアの男性が、絵を描くのが好きな女性と出会ったところからはじまる青春ラブストーリー。男性の小説の中で、科学を志す亦恕と、芸術を求める珂雪の恋愛が“劇中劇”の形で進行していき、周囲の恋愛も複雑にからみあうという実験的な作品となっている。
台湾成功大学の水利工程博士として、助教授兼研究員の任にある蔡智恒が、みずからの日常を投影したような作品だ。

 
   
     

 

 

経済発展にともなって空前の観光ブームに沸いている中国ですが、そんな勢いを裏付けるかのような大規模な観光博覧会「2004北京国際旅遊博覧会」が7月22日から24日まで、市内の北京展覧館で行われました。世界50カ国・地域、中国の21省・自治区・直轄市が参加した北京では初めての国際観光博で、日本のブースもなかなかの人気。
名湯や桜の花のパネルで美しく飾られたブースには、ビデオテレビが設けられ、石原国土交通大臣がハッキリとした正確な中国語で「ようこそ日本へ!みなさまのお越しを心よりお待ちしています」と呼びかけていました。
最近のニュースによれば、日本は中国人の団体観光客のビザ発給対象地域について、これまでの北京、上海、広東の3地域に、天津、江蘇、山東などの5地域を新たに加えることを決めたとか。博覧会の熱気を見るかぎり、「日本観光のブームは、まだまだこれから…」と大きな期待が持てそうです。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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